パネルディスカッション(写真)では「教員評価は、こどもから教育への権利を奪う」と題して、中田康彦一橋大学教授、冠木克彦弁護士、土肥信雄元東京都立高校校長 、大阪府立高校卒業生、現職教員(新勤評反対訴訟団原告)、大阪の子どもの保護者が、現在大阪東京を中心に全国的にすすめられている「教員評価」の問題点について、それぞれの立場から発言しました。
◇ 中田康彦一橋大学教授は、『業績評価』がどんな流れを作り出すのか、「評価」が自己目的化してしまうことによる怖い効果について2つの問題を指摘し、こどもをだしにした評価システムを批判しました。
第1の問題として:
『業績評価』は、一年間という短期間の中で、”形のある変化””目に見える変化”を作り出すことが求められ,形のないものが切り捨てられていっていることが大きな問題である。
そもそも3年間計画による活動など(長期計画)が通用しないシステムで、目に見える”形のある変化”でないものはどうしても切り捨てられていき、”じわりじわりと目に見えない積み重ねの中で作り出されていくような変化”がシステムの中から切り捨てられ疎外され排除されていく。
「評価」というシステムは、「評価」する者ががだんだん大きな力を持つようになってきて、「自己目的化」「特権化」していき、誰が評価されていくのかということが、その人その人の一番大事な中心を占めるようになっていく。
そうすると、目に見えにくい変化はシステムから締め出され、簡単には成果が表せず数年間にわたるような、短期間では解決できない問題はシステムから締め出されて、システムというものが一人一人の行動の中心になってしまう。
教育の場の中での、数字では表しずらく時間がかかることが、どんどんしめ出されていってしまう。
学校に行きたくないという子供が”学ぶという活動”に面白さを感じたり意義を見出したり、
”学校に通うということに抵抗がなくなってくる”というような”時間のかかる営み”がしめだされる。
さらに、この教育活動には、教師一人一人が行う活動とともに、学校全体として行う活動があるにもかかわらず、いつの間にか(システムから)締め出されていってしまう。
以上のように、評価をすることが自己目的化してしまうだけでなく、教師の活動の特定のことが業績評価の成果となることから、型にはまった活動が求められ、教育がある一定のパターンしか行われなくなる
。
これが「業績評価」の効果で、近い将来もたらそうとする怖い効果である。
第2の問題として:、
一人ひとりの教員が、自ら目標と自分の能力に即し、自分が受け持っている生徒に対してどういう手だてがいいのかということを考える自主性がだんだん失われていく。
校長の求める”ある型”の中にはまった活動が求められることによって、みんな違ってみんないいという世界ではなくなってくる。
そうすると生徒の多様性も合わない形になる。教師の活動の多様性がなくなってしまうので、目の前にいるこどもにあわせた多様性に向き合った活動が締め出され、活動の多様性がなくなる。
どう向きあうかのかではなくなってしまう。
ここには、”評価する人”と”評価される人”として、校長と評価される先生の間に、人が人を評価することに伴う生きにくさが生まれる。
ある特定のパターンの教育しかなされなくなり、一人一人が目標を立てる多様性が失われ、型にはまった活動が求められてくる。
◇ 現在上告中である新勤評裁判の弁護団として冠木弁護士が、教育の中心はこどもであり、直接責任を負うのは教師であるのに、教育目標を校長が決め、府教委が教育現場で教師を評価することで支配していることについて発言。
◇ 自ら裁判でたたかっている土肥元東京都立三鷹高校校長は、「評価」の主体は生徒であるべきだが、一人ひとりの生徒を見ていない校長が「評価」することによって生徒が置き去りにされ、職員会議で反対意見を言ったことなどで教員は低い評価とされ、学校現場で思想統制が行われ、都立高校には言論の自由がないことを告発。
◇ 支援学校教員は、学校の「教育目標」は校長が出すが、それが教育本来の営みから外れており、これに合わせて個人目標を立て管理職も多忙化し機能していないシステムであることを現場から指摘。
◇ 府立高校卒業生は、自らの高校卒業式前の学年集会で「君が代斉唱時の起立」について校長先生に質問したところ、校長先生が答えなかったため担任の先生が校長に生徒の質問に答えるよう要求してくれた。しかし「校長の名誉を傷つけたから」ということで「C」評価になったことを後で知り、生徒に支持される先生が「C」という低い評価をされることに疑問を感じて、他の卒業生とともに新勤評裁判の裁判長に意見書を出したことを発言。
◇ 高一生の母親の立場から、何でも他人と比較し競争させ現在の教育の中では、お互い助け合うのではなく信頼関係が難しくなっていることについて指摘し、新勤評システムはお互いに助け合う人間らしい関係性を薄れさせてしまうと発言。
◇ 最後に、コーディネーターの吉田正弘氏が、橋本府知事のもとで上意下達で強行されている新勤評システムを止めるために、現場、保護者、市民が手をつないでいくことが重大切であり、今日の成果を力にして頑張っていきましょうと呼びかけました。
全国各地の参加者発言では、千葉・東京・神奈川、宮城、山形、愛知、三重、兵庫、広島、福岡、大分からの参加者が登壇しあいさつ。
東京の「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟を進める会永井栄俊共同代表、「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会近藤徹事務局長、門間三中処分撤回訴訟原告川口省吾さん、鈴木留美子さん、松田幹雄さん、朝鮮学校卒業生、在特会襲撃事件報告:徳島県教組小原信二委員長、業績評価裁判をたたかっている大嶽昇一さん、疋田哲也さん、宗宮恵司さん、宇都宮喜康さん、平谷知寿さん、旧松下PDP偽装請負問題で昨年最高裁不当判決後も職場復帰を目指してたたかい続けている吉岡力さん達が次々に参加者に裁判報告や取り組み紹介などを行い支援を訴えアピールしました。
井前弘幸事務局長が、3つの行動の提起( ①大阪の新勤務評定制度を廃止に追い込む全国的な闘い②大阪情報と全国情報の集約と協同③『新勤評制度はいらない!全国交流会』本集会のエネルギーの継続を!)について説明提案し、集会決議とともに満場の拍手で確認されました。
開会1時間前からオープニング企画DVD「はなが行く」が上映され、「浪花の歌う巨人」の趙博さんの歌と演奏もおこなわれました。
集会後、日曜日の夜の大阪を西梅田までデモ行進しました。
集会前日の18日には、大阪市教育会館でプレ企画として全国交流集会が開かれ、60人が参加し、東京・千葉・神奈川からは7人が参加。6時間にわたってほぼ全員が発言し活発な質疑・意見交換が行われその会場で夕食交流会も開かれて交流しました。
集会会場の中之島公会堂エントランス正面には、東京のブースも設置され、都政新報意見広告「学校に自由と人権を共同アピール」を500枚配布し「日の丸・君が代」裁判全国原告団集会報告集の販売と署名活動が行われました。
言論・表現の自由を守る会からは事務局長と会員が参加し、ブースでの展示と資料・署名の配布・回収を行い、国際人権規約のパンフレット(外務省発行)と都立板橋高校卒業式「妨害」事件”証拠改ざん疑惑報道記事”(藤田さんを支援する会)、”今 言論・表現の自由があぶない!”4つの署名チラシ2枚をセットにして、開会前に駆け付けた参加者のみなさんに200部配布し、置きビラでも”今こそ個人通報制度の実現を!日弁連2.25大集会”チラシ200枚と、4つの署名300枚を持参いただき、4つの署名には100筆の署名の協力をいただき、こどもの権利条約・選択議定書に対する3つの勧告パンフの普及も行いました。