◆ 公立学校選択制 導入区で見直しも

 公立の小・中学校への進学で、保護者の希望に沿った学校を複数校から選ぺる「学校選訳制」。特別区ではこれまで19区が採用しているが、近年は地域密着型の学校運営など教育方針の変化もあり、制度の見直しが必要との指摘も多い。こうした中、杉並区は2011年度から見直す考えを打ち出した。検討組織を立ち上げて、学校選択制の廃止も含めて議論する。板橋区も6月に有識者を入れた検討会が小学校を対象に制度を一部変更する方針を示しており、区が準備を進めている。

 ◆ 杉並「来年度に検討組織」
 ◆ 板橋「小学校を隣接区制」
 1日に開かれた杉並区議会の文教委員会で、区教育委員会が「学校希望制」について、将来的な見直しの方針を説明した。
 同区ではこれまで、区立小学校43校と中学校お校の新1年生を対象に学校選択制を採用。居住地の学区と、隣接する学区から進学先を選べる「隣接区域選択制」を運用している。区内の小学校に転入した場合などは、1年生以外でも一定範囲で希望を申請できる。
 同区の選択制の利用状況は、過去5年間の平均で小学校への進学で毎年約640人(約20%)、中学校への進学で約750人(約24%)となっている。
 区教委は11年度、区の教育ビジョンや基本構想の再構築に並行する形で学校希望制を見直す考え。


 学校関係者や保護者などにアンケート調査や懇談を通じて意見を聞きつつ、区教委も加わった検討組織を立ち上げ、年度内に具体的な方向性を打ち出すとした。国の教育制度改革の動向や小中一貫教育などとの関係性を踏まえ、検討の論点にするとした。

 学校教育法では、市区町村の教育委員会は、公立小・中学校の就学校指定が原則だが、「あらかじめ保護者のの意見を聴取する」とし、学校選択制が1998年に導入された。教育の多様化や競争による質の向上、保護者側の学校選択権の保障などが背景になった。
 都内では、2000年に品川区が初めて導入。今年度は小学校で23区市、中学校で29区市が、それぞれ採用している。
 23区では19区が採用、大田、世田谷、中野、北の4区が未採用。
 採用状況を詳しくみると、15区が小中学校の両方、4区が中学校にのみ、導入している。

 ◆ 独自要件の区も増加

 学校選択制を評価する保護者も多い一方で、学校間の格差や教育格差を拡大するとの懸念も根強い。「人気校」に対し、「不人気校」も生まれるためだ。
 最近は、地域密着型の学校経営が重視されるなど教育環境が変化していることもあり、制度を見直す動きが盛んになっている。特別区でも、こうした機運が高まつている。
 09年度に「学校選択制検証検討会」を立ち上げて議論した板橋区は、今年6月に最終報告書が答申され、学校選択制は「保護者から一定の支持、理解を得ている」とし、存続方針を確認した。
 同区では従来、区内の学校を任意に選ぺる「自由選択制」を採用しているが、小学校については、遠距離通学の安全面への配慮から、徒歩を原則に、選択区域を居庄地の学区と隣接学区とする「隣接区域選択制」への移行が提起された。
 09年4月時点の調査では、学区と隣接学区からの通学割合が小学校で97%超を占めており、制度改編の影響は限定的と見られる。
 「検討会」の答申を受けた区は、制度変更の方針を決め、11年度募集(12年度入学者)に反映するため、準備をしている。
 従来の導入区ではこのほか、小学校の自由選択制を09年度に一部見直し、「原則として徒歩通学30分以内」にした江東区や、「原則徒歩通学」とする江戸川区や、区内を4区域に分けるブロック選択制(品川区)、選択先を一部に絞った特認校制(中央区)などの取り組み例がある。

『都政新報』(2010/12/3)

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