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「紅葉の歩道を最高裁東門へ」 《撮影:平田 泉》

 <最高裁要請行動・個人要請文> 2010.11.24.

「日の丸・君が代」強制が「学校経営上の最大の課題」?

「君が代」強制解雇事件上告人 前川鎭男

 私は、前回9月14日にも上告人として要請しましたが、再度以下のことについて要請します。私たちはこれまでの地裁、高裁段階で、卒・入学式等に「日の丸・君が代」を強制する通達、いわゆる「10.23通達」を始め、今日の東京都教育委員会(以下、都教委という)が行っている誤った教育行政について、数々の事実を明らかにしてきましたが、ここではその内の一点を中心にして要請します。
 都教委は「10.23通達」を発出した理由として、「卒・入学式において『日の丸』を掲揚し、『君が代』を斉唱することは学校経営上最大の課題である」としています。しかし、このことは憲法や教育基本法-2005年改定の教育基本法はその理念においては変わりないものと捉え、ここでは旧基本法をいう-の理念に反する上、教育条理にも叶わないものです。


 今の憲法や教育基本法は、戦前の教育が犯した過ちの反省の上に立って「国民の教育権」や「教育の自由」を謳い、「民主的で文化的な国家の建設や、世界の平和と人類の福祉に貢献」するという「理想の実現は根本において教育の力にまつべきものである」としました。そして教員も生徒もその理想の実現を目指して努力しました。もちろん教育委員会も同じ方向で努力しました。

 私は敗戦から4年後、1949年に三重県の片田舎の小学校に入学しました。皆貧しかったが、理想に燃えた若い教員に教えられ、自由と民主主義を身につけ、のびのびと楽しい学校生活を送りました。そして「清く、正しく、美しく」生きることを学びました。
 1967年に都立高校の教員になりました。そこには自由で民主的な職場があり、先輩教員に学びながら、のびのぴと楽しい教員生活を送りました。生徒に「無限の可能性」を持っていると説き、「完全燃焼」を求めました。
 そうした教育を可能にしたのは「教員は教育を司」り、「教育行政は教育に必要な諸条件整備をする」という法の精神が生かされていたからに他なりません。実際、かつての東京の教育環境は日本一いいものでした。それを都教委が保障していました。

 しかるに、今日の都教委は斯くも露骨に教育内容に踏み込んだ教育行政をしていています。そもそも「学校経営」とは、その長を校長として学校をどのように運営するかであり、行政の立ち入ることではありません。その「課題」は偏に各学校に委ねられています。また、卒・入学式をどのように執り行うかは大綱的基準である学習指導要領を拠り所として各学校が決めることです。
 よって、都教委が「卒・入学式において『日の丸』を掲揚し、『君が代』を斉唱することは学校経営上最大の課題である」として「10.23通達」を発し、「日の丸・君が代」を強制することは、憲法や教育基本法で禁じられている「教育内容への不当な介入」以外の何ものでもありません。
 もし、裁判所がこれを許すなら、現行の憲法や教育基本法は無いに等しく、戦前と同等の教育体制を認めることになります。
 実際、現在の都教委はその教育目標(2001年1月11日改定)から憲法や教育基本法を削って、その理念や精神を無きものとしていますが…
 また、学校経営上の最大の課題が「日の丸・君が代」の掲揚・斉唱であるというのは、誰が考えても異常であり、滑稽とさえ言えます。

 私は37年間の教員生活の中で教育とは何か、教員はどうあるべきかを学び取ることができました。
 一言で言えば「教育とは、一人ひとりの生徒の持つ可能性を最大限に引き出すこと」であり、「教員は、生徒自らがそれを良く獲得できるよう、導き、励まし、支えるべきである」ということです。そして、その過程で教員も生徒から多くを学ぶことができて「教育は共育である」とも気付きました。
 そういう教育を実現するために教育委員会が為すべき最大の課題は「教育の自由」を保障し、十分な人的配既や予算、施設・設備の充実を期することです。そのことに都教委は努めるべきです。
 しかるに今の都教委は、「10.23通達」以降、学校現場への管理・強制、教育予算の削減、人事考課制度や主幹、主任教諭制度、教育内容への不当な介入など、様々な誤った教育行政を行っています。
 そのために東京の教育環境は今や全国一悪いものになってしまい、現場の教員は苦しんでいます。今、この時も「何とかしてほしい」「もう辞めたい」と叫んでいます。当然そこで学ぶ生徒たちはその犠牲者と化しています。

 私たちの、これまでに訴えてきた主張と真摯な気持ちをご理解いただき、憲法や教育基本法に基づく公正・公平な判決を切にお願いします。

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