◆ 都教育委員宛請願コピー配布、「全てか、選別か」で齟齬(そご)

永野厚男・教育ライター

 東京都教育委員会宛請願の取り扱いを巡り、市民と都教委事務局の間で論争が起きている。
 旧都教育委員会請願処理規則のもとでは、都教委事務局が受理した請願の全てを「教育委員が審議する教育委員会定例会等(以下、会議)」に提出していた。しかし1990年代後半以降、"君が代"強制や"つくる会"教科書採択、人事考課・主幹教諭制度導入等、都教委が政治色の濃い施策を強行するのに比例し、自分たちに批判的な請願を忌み嫌う都教委の役人らの主導で、「会議の実質化・効率化」の名目のもと、請願を「会議に諮る重要事項」か、「都教委事務局主管課だけで処理してしまうか」に選別できるよう、02年6月の会議で規則"改正"を決定させ、翌月要綱も定めてしまった。
 昨年都教委に出た請願20件中、会議に諮られなかった10件は、部長・課長レベル等で決裁され、「提出された請願はご意見として受けとめさせて頂きます」という無味乾燥な文書が郵送されてきただけ。


 このため3個人、9団体が都議会に「都教委請願制度改善の陳情」を提出。今年9月16日の文教委員会で島田幸成議員(民主)の質問に、都教委の庄司貞夫総務部長は「請願の全ての写しを教育委員に配布します」「全てです」と答弁した。これを受け島田議員は「改善が認められるので民主党は今回に限り、採択に賛成しない」と述べ、賛成は星ひろ子議員(生活者ネット)と畔上三和子議員(共産党)の2人に留まり、不採択に。だが、30人超の傍聴者たちは、「一歩前進」と喜んでいた。

 ところが10月27日、"君が代"裁判を闘う元教職員や保護者・市民ら20人の請願行動時、都教委の伊藤彰彦・教育情報課長は、「庄司部長が『全て』と答弁したのは『会議に上げる(報告する)ものは全て』という前段がある。言葉足らずだったが、島田先生も納得されている」と発言。元教職員らは「庄司部長答弁は『出た請願全て』のはず」と強く抗議した。
 島田議員は10月29日、取材に「都教委事務局は『請願署名等の原本はこれまでも教育委員6名に閲覧はできるようにしていた』と言うが、実際の6名への配布物は請願の要旨だけだった。事前の質問調整で、『請願者の肉声が伝わるよう原本のコピーを全て6名に配布せよ』と要求したが、都教委はそれすらも『今後、検討』と言ったので、『それではダメ』とはねつけた。だが、『出た請願全ての6名への配布』までは、答弁を取れなかった」と語った。
 一方、畔上議員は「少なくとも初発の答弁は『出た請願全て』と聞き取れた」と述べており、未完成の議事録がどうなるか、注目されている。

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