▼ 昨日9月15日、岬の会として世田谷区教育委員会に業績評価に関して質問書を提出しました。
   以下に質問書を掲載します(提出したものにはない、各項目ごとの解説を加えます)。

     質 問 書 ②/2



 5.絶対評価と相対評価について

 人事考課規則によれば、「第一次評価者(校長)は、評価後直ちに評価書及び当該評価結果に都教育長が示す分布率を適用した資料を作成し、調整者(教育委員会人事担当部長)に提出するものとする。」(第12条2)とされています。
 この「分布率適用資料」を作成する過程で、調整者は、校長との「意見交換」、「指導及び助言」を行うことが規定され(第12条2、3)、「最終評価者(教育長)が適当でないと認めた時は、第一次評価者(校長)に再評価させる」(同条6)とされています。また、「分布率適用資料」の書式には、「学校の順位」欄があり、「職種ごとに校内順位を付与する」(09年12月1日付人事部職員課の区市町村教委宛事務連絡添付の「取扱注意」文書)とされています。

①校長が第一次評価を行うにあたって、貴委員会は、ABCの分布率を予め提示していますか。校長との意見交換の際には、提示していますか。

②校長の教員に対する総合評価の分布が決められた分布率と異なる場合、校長に評価の修正を指導していますか。校長がその指導に応じないことは、管理職としての評価のマイナス材料になりますか。

③校長の教職員に対する総合評価の分布が決められた分布率と異なることは、人事考課規則第12条6のいう「適当でない」場合にあたりますか。そうした第一次評価は、再評価の対象になりますか。

④校長が「分布率適用資料」を作成するにあたって、分布率に沿って各評価を割り振らせる指導が行われ、再評価が命じられるとすれば、それは、校長に相対評価を行わせていることを意味しませんか。

⑤絶対評価といいつつ、校長に事実上の相対評価を強いるこの仕組みこそ、「事実に基づかない評価」「後付け的な評価」、「総合評価の結果にあわせるように事実とは無関係に各要素を評価する、いわゆる逆算評価」を生み出す根本的な原因であると考えますが、いかがでしょうか。

 解 説 5

 業績評価は、第一次評価者である校長が絶対評価、最終評価者である区教育長が相対評価をつける仕組みになっています。A・B・Cの分布率を都教委が定め、区教委を通じて校長に示しています。校長が、オールBをつければ、評価のやり直しを命じられます。つまり、校長は、絶対評価といいつつ、相対評価をさせられているのです。また、学校の全職員を職種別に成績順に並べかえた「分布率適用資料」を提出させられています。
 都立校では、都教委が「C・Dを20%以上出せ」と校長に指示していることは、元三鷹高校校長の土肥さんも証言されています(「生徒がくれた“卒業証書”」旬報社135P以下)。
 大嶽さんにC評価がつけられた2004年度は、業績評価が賃金に反映された最初の年度であり、第一次・第二次評価がC・C以下の教員が昇給延伸の対象となりました。この年度は、昇給延伸となる教員にのみ本人開示が行われました。(現在は、第一次評価は校長に一本化され、ABCD4段階評価に応じた査定昇給制度となっています。また、希望者全員に本人開示が行われています。)
 業績評価で賃金が決まるとなると、昇給原資が決まっている以上、区教委は、分布率どおりに校長にABC評価を割り振らせることになります。また、校長も、「みんなBにしといたよ」などと、教職員をごまかすわけにはいかなくなります。
 校長・教頭は、人身御供を差し出すことを迫られ、大嶽さんが選ばれたことは明白です。 絶対評価といいつつ、校長に事実上の相対評価を強いるこの仕組みの矛盾点を解明します。

 6.苦情相談制度について

①貴委員会の人事主管課長、また人事主管部長が、苦情申出者、校長から事情聴取した内容が、事実関係において食い違う場合、どのような方法で事実確認を行っていますか。

②世田谷区立学校の教職員の苦情は、貴委員会の人事主管課長が委員をつとめる第3苦情相談検討委員会で検討されるのですか。そこでは、どのような検討作業を、一件につきどの程度の時間をかけて行っているのか、教えて下さい。

③苦情相談の取扱いに被評価者が納得せず不服がある場合には、いかなる救済手段がとられるべきと考えておられますか。開示面談の際には、苦情相談を教示するわけですから、苦情相談検討結果の本人通知の際にも、次なる救済方法が教示されるべきと考えますが、いかがでしょうか。

④苦情相談の申し出は、教職員が所属する職員団体を通じて行うことはできますか。申し出の際に、職員団体が立ち会うことはできますか。

⑤国家公務員の苦情処理制度においては、本人からの事情聴取の際の第三者の同席、本人が希望する第三者からの事情聴取がともに認められています。東京都の人事考課制度の一環としての苦情相談においても、被評価者が申出しやすい制度とするために、第三者の立ち会いを認めるべきと考えますが、どうでしょうか。貴委員会の裁量で、世田谷区では、そうした運用を行うお考えはありませんか。

             以上

 解 説 6
 大嶽さんは、苦情相談を申し出ましたが、評価の修正も校長への注意・指導もなされることはありませんでした。裁判にまで訴えて初めて、評価の違法不当性が認められたことは、苦情相談制度が機能していないこと、人事考課制度がそれ自身のうちに評価の公平・公正性を担保する仕組みを備えていないことを突き出しています。
 苦情相談制度では、苦情相談を受け付けるのは人事担当課長、校長から事情聴取するのは人事担当部長、検討委員会の委員は他区の教育行政の人事担当者、決定権者は教育長でまったく第三者性はありません。事実、評価の修正や校長への指導もほとんど行われていません。
 他方、開示面談や苦情相談は、職員団体の関与や第三者の同席が認められれば、校長・区教委追及の場に転化することもできます。苦情相談での検討の実態を質し、制度改善の可能性を探ります。
 大嶽さんは、昇給延伸の取消を求めて人事委員会に措置要求しましたが、3年間待たされたあげく、棄却の判定でした。
 一審判決が、「職務実績記録」も提出させていないなど、まともに調査もしていない手続上の違法を認め、判定の取消を命じたことは画期的です。
 人事委員会の判定は、業績評価は「原則として評価者の判断が尊重されるべきもの」とし、苦情相談の検討結果を根拠に、事実誤認や恣意的評価がないと結論づける代物でした。教育行政の判断をそのまま追認するに等しい判定文であり、人事委員会の中立的機関としての立場をまったく逸脱しています。
 苦情相談の検討結果に不服がある場合の救済方法について、区教委はどう考えているのか、見解を聞きたいと思います。

『業績評価裁判を支援する会(岬の会)』(2010年09月16日)
http://misaki2010kai.blog58.fc2.com/blog-entry-16.html#more

≪パワー・トゥ・ザ・ピープル!!
 今、教育が民主主義が危ない!!
 東京都の「藤田先生を応援する会有志」による、民主主義を守るためのHP≫