【金曜アンテナ】
 
三宅勝久 ジャーナリスト

 東京都杉並区(田中良区長)の区議から選ばれた非常勤監査委員が、土日の2日しか在籍せず仕事も一切していないにもかかわらず*月額15万1○○○円の報酬が払われた問題で、東京地裁(八木一洋裁判長)は9月30日、これを違法とする判決を言い渡した(経緯は2000年6月26日、7月24日号本欄参照)。
 裁判は杉並区在住の筆者が原告となって昨年9月に提訴。判決によれば、日割りの規定がなく一日でも在籍したら月額を満額支給すると定めた*区条例について「議会の裁量権の範囲を超えている」として違法・無効と判断。土日二日で月額報酬各15万1〇〇〇円を受け取った区議について、区長はこれを返還させよ、と命じた。
 税金をチェックすることを仕事とする監査委員自らの税金泥棒ぶりについて、司法がクギを刺すという前代未聞の判決といえる。


 月半ばでわざと交替することで前任者と後任者の両方にその月の月額報酬を満額で払う。この巧妙な手口によって杉並区では少なくとも1995年からほぼ毎年、年間を通してひと月多い13カ月分もの報酬が支出されてきた。
 監査委員を経験した者はこのカラクリに気づいていたはずだが、問題を指摘する者はいなかった。
 「(13カ月の報酬について)たいしたことじゃない。ほかに重要なことがある。それを取材したらどうかね」
 監査委員を経験したひとりの議員はかつて筆者にそう語った。
 議員だけではない。監査委員事務局も13カ月分の予算を計上して計画的に違法支出に加担してきた。
 また監査委員の人選は、事実上有力会派の談合で決定。監査委員は会派の力関係の中で割り振られていた。山田宏前区長ら区側もこれを見逃していたわけだ。
 議会と区執行部との癒着は末期的というしかない。その意味でも、今回の判決は杉並区と区議会の馴れ合いの歴史を終結させる意義深いものといえる。
 10月4日現在で、杉並区が控訴したとの情報はない。区民の間では「いっそ最高裁で確定させたほうが世のためだ」との声もある。
 杉並区では区議らが公金で政治資金パーティ券を買うという悪習もあり、11月9日に判決がある。

『週刊金曜日』(2010/10/8)
http://www.kinyobi.co.jp/backnum/antenna/antenna_kiji.php?no=1433

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