永野厚男(教育ライター)
03年の10・23通達以降、校長の職務命令下で行われている卒業式等の"君が代"時に不起立を貫き懲戒処分された教員中、退職者を除く4人(いずれも高校教諭)に、都教育委員会は7月21日、都内の都教職員研修センター(センター)で強行した服務事故再発防止研修で、自分たちがアイヒマンのように命令に従うだけの組織になっている事実を認めた。
「再発防止研修抗議行動」 《撮影:平田 泉》
戒告(処分1回目)と減給(2・3回目)の被処分教員合同の「基本研修」の"講義"では、"講師"の山本謙治・都教委職員課副参事が地方公務員法第32条を"根拠"に「上司(校長)の職務命令に忠実に従え」と演説。教員が「無効であり従う必要のない、職務命令に重大かつ明白な瑕疵(かし)がある場合」の判断主体を問うと、北澤多美(ますみ)センター教育経営課長が「係争中だから」と遮ろうとした。しかし教員が「係争中なのに処分を続けている」と言うと、山本氏は「当該官庁(都教委)・人事委員会」と述べた後、渋々「裁判所も入る」と認めた。
「"君が代"起立等強制の通達と職務命令は違憲・違法。いかなる処分もしてはならない」と判示した東京地裁難波判決(06年9月)に異を唱える都教委だけに「裁判所が判断主体」と認めたくない本音が露呈した。
この後、減給の教員は別室で"講師"のセンター課長、司会の統括指導主事、記録の指導主事、校長の4名が取り囲む中、"説諭・服務指導"と称する「専門研修」を受講させられた。
A教諭は、「都教委が分限免職した増田都子さんの教諭在職中の個人情報を右翼3都議に漏洩し、最高裁で違法行為と確定した事件こそ、地方公務員法第34条の守秘義務違反だ。その当事者の近藤精一・前センター所長が東京学芸大で教鞭をとっている」と発言すると、北澤氏は「私たちは答える立場にない」と、回答を回避した。
B教諭は、「ソンミ村事件(ベトナム戦争時、妊婦や乳幼児を含む無抵抗の村民504人を機関銃で無差別に虐殺)の実行犯の米軍人が、"上司の指示・命令"を理由に罪を免れようとした事実」を挙げ、「違憲・違法な職務命令には従わないという抗命権・抗命義務が個々の教員になければ、民主的な社会は保てないが、そういうことに関係なく、研修を進めるんでしょ?」と発言。講師の並木正・専門教育向上課長は「その通り」と回答。都教委が実質、ナチス下のアイヒマン化していると認めた。
センター前では、100人を越える保護者・市民・教員らが炎天下の中、4時間にわたる抗議・支援行動を続け、「イジメ研修はやめろ。反省すべきは都教委だ」と、シュプレヒコールを上げた。
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