二〇一四年までに完了するとされていた在沖縄米海兵隊のグアム移転が大揺れだ。準備の運れで米議会の各委員会が関連予算の削減などを求めているからだ。大物議員からは「沖縄に海兵隊は不要」という意見まで飛び出した。沖縄・手分間問題に影を落とすことは必至だ。(鈴木仰幸)

 ★ 沖縄海兵隊不要論も

 米下院軍事委員会の公聴会では二十七日、米海軍省高官が書面証言で、二〇一四年に完了予定だった在沖縄米海兵隊約八千人のグアム移転を先送りする考えを示した。ただ、公聴会に出席したグレグソン国防次官補らは書面証言で、普天間飛行場の辺野古移設についての政治決定は先送りしないよう期待を示した。
 海兵隊のグアム移転については、上下院の歳出委員会も「グアム住民への配慮不足」など注文を付け、関連予算の削減を要求している。
 こうしたグアム移転への“逆風”は今月上旬から加速している。米民主党の大物下院議員パーニー・フランク氏は今月八日、ケーブルテレビ「MSNBC」のトーク番組で「もう冷戦時代ではない。海外での軍事費は削減すべきだ。沖縄の海兵隊は不要」と発言した。


 「私の周りにいるほとんどの人は(戦争映画の名優)ジョン・ウェインが亡くなったときに海兵隊は沖縄を去ったと思っている」「(中国のけん制に)空軍と海軍は必要だと思う。だが(沖縄から)一万五千人の海兵隊が中国に上陸し、数百万人の部隊と対峙するなんてことはありえない」
 フランク氏は十日には米公共ラジオにも出演。「沖縄に海兵隊の必要性を感じない」「海兵隊は六十五年前に終わった戦争の遺物」とトーンを上げ、物議を醸した。
 保守色が強い米紙「ウォールストリート・ジャーナル」でさえも「海兵隊を追い出したい沖縄がワシントンで有力支援者を獲得」と報道。「経済低迷が続き、歳出削減圧力が強まる中(フランク氏が)支持を得る可能性がある」と伝えた。

 ★ 「軍事費より雇用創出」

 フランク氏は共和党のベテラン識員ロン・ポール氏との連名の論文で「イラクやアフガニスタンでの戦費を別にしても、軍事費は歳出全体の42%」と指摘。軍事支出の専門家による「冷戦時代の兵器削減や海外での活動縮小で十年間に一兆ドル(約八十六兆円)の支出削減が可能」とする試算を紹介した上で「必要なのは経済の立て直しと国民に働く場を与えること。それにはまず、軍事費削減」と結論づけた。

 ワシントンで今月二十三日、フランク氏と会った民主党の斎藤勤衆院議員は「フランク氏は『日米同盟の重要性』を強調した上で『海兵隊を置いておかなけれぽならないという先入観にとらわれるべきではない。私の海兵隊撤退論には日米の強い信頼関係が根本にある』と話した」と語る。
 「米議会やシンクタンクの専門家には『沖縄海兵隊不要論』が根強い。現状の政府間合意を反故にはできないが、日本政府はより主体的に基地問題に取り組まなければいけない」(斎藤議員)
 グアム移転の延期が決まれば、ワンセットの辺野古移設への影響も避けがたい。二十二日付のウオールストリート・ジャーナル紙は「(在日米軍基地をめぐる)日本での政治的判断の遅れに加え、オバマ政権はワシントンで新たな障害に出くわした」と報じている。

 『東京新聞』(2010/7/31【ニュースの追跡】)

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