送検される日本振興銀行前会長の木村剛容疑者=東京都千代田区の警視庁麹町署で2010年7月15日午前9時3分、内藤絵美撮影 
日本振興銀行(東京都千代田区)による検査妨害事件で、同行が5月下旬に金融庁から一部業務停止命令を受けた後、同行の融資先企業などで構成する任意団体「中小企業振興ネットワーク」との取引に関する書類やメールを破棄するよう全支店に指示していたことが同行関係者への取材でわかった。同行が金融庁から銀行法違反(検査忌避)容疑で告発される見通しが強まっていた時期の指示だったことから、支店関係者は「捜査当局の家宅捜索に備えた証拠隠滅の可能性を感じた」と話している。【伊澤拓也、酒井祥宏、川崎桂吾】

 支店関係者によると、指示があったのは5月27日の一部業務停止命令から数日後の6月初めだった。同行本店の営業幹部がテレビ電話を使った朝礼で「処分を受けたので、自粛ムードにするため銀行内のポスターやのぼりを外すように」と伝えた後、「中小企業振興ネットワークに関係する資料、メールを破棄すること」と指示した。破棄する理由についての説明はなかったという。警視庁による一斉捜索は6月11日だった。

 捜査関係者によると、同行前会長の木村剛容疑者(48)らは検査対象の約280件のメールを意図的に削除したとして逮捕されたが、削除されたメールのほとんどは同ネットワークとの取引に関するものだった。警視庁は、同ネットワークとの不透明な取引を隠すために検査妨害が行われた疑いが強いとみている。

 金融庁は09年6月~今年3月、同行のリスク管理状況などを調査するために実施した立ち入り検査で、検査対象のメールを破棄するなどの法令違反が確認されたとして、同行に対し、新規の大口融資や営業活動などの業務を4カ月間停止する一部業務停止命令を出した。

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 警視庁は15日、木村前会長ら5人を銀行法違反(検査忌避)容疑で東京地検に送検した。

【毎日新聞 夕刊】