毎日新聞 07月09日
支援者らに囲まれ水戸地裁土浦支部に入る桜井昌司さん(中央)と杉山卓男さん(手前右から2人目)=茨城県土浦市で2010年7月9日午後1時3分、尾籠章裕撮影


 茨城県利根町布川(ふかわ)で67年に男性が殺害された「布川事件」の再審初公判が9日、水戸地裁土浦支部(神田大助裁判長)で開かれた。強盗殺人罪などで無期懲役が確定し服役後に仮釈放された桜井昌司さん(63)と杉山卓男さん(63)は、起訴内容の認否で改めて冤罪(えんざい)を主張し、弁護団も早期無罪判決を求めた。

 一方、検察側は有罪立証のため、事件以来43年で初めて遺留品のDNA鑑定を請求。弁護団は取り調べの際に2人のDNAが誤混入した恐れがあるとして反対しており、地裁支部の判断が注目される。事前の3者協議で6回の公判期日が指定されており、早ければ年内にも判決の見通し。

 最高裁によると、死刑や無期懲役が確定した事件の再審は戦後7件目。過去6件はすべて無罪判決だった。

 2人は別件逮捕後の67年10月、強盗殺人容疑で茨城県警に逮捕された。捜査段階では大工の男性(当時62歳)を殺害し現金約11万円を奪ったと「自白」し起訴された。公判で否認に転じたが78年に無期懲役刑が確定し、96年に仮釈放されるまで18年間服役した。

 その後の第2次再審請求で、現場で別人を見たという近所の女性の供述調書や、編集跡がある自白の録音テープなどの新証拠が開示された。これらを基に地裁支部は05年「自白は信用できない」と再審開始決定を出し、09年12月に最高裁で確定した。【原田啓之】