何が残された問題か
製作者が始めて市民に公開 ジャーナリズムの「今」を問う
放送を語る会編 かもがわ出版
定価1050円 2010年1月30日第1刷発行
【放送を語る会】
1990年に発足した視聴者団体。主としてNHKで働く労働者によって活動を開始したが、その後、民法関係者、視聴者、研究者、ジャーナリストなど多様な立場の人々が参加して現在に至っている。年1回の集会、隔月のフォーラムなどを開催し、視聴者、研究者、放送労働者の3者が、放送について語り合い、考える場を提供してきた。
活動の記録や会の見解などは「放送を語る会」ホームページに掲載している.
http//www.freeml.com/katarukai
「はじめに」より抜粋
政治家の圧力を受けた番組が、日本軍「慰安婦」を扱った番組であったことは重大な意味を持っている。アジア・太平洋戦争で、日本がアジアの国々に膨大な犠牲者を出したことは歴史の事実である。自国民の被害だけでなく、アジアの広い地域で起こった加害の事実を発掘し、向き合うことがなければ戦争の実相を次代に伝えることが出来ない。
しかし、日本の放送界では、わずかな例外はあるものの、この領域の番組を大きく欠いたままである。この「番組改編事件」以後、NHKに限らず民放でも日本軍「慰安婦」に関する番組はほとんど作られていない。NHKに持ち込まれた右派政治家の圧力は、放送界で克服されず今も残り続けている。
本書が、こうした放送ジャーナリズムの現状を問い直す一助となることを期待したい。
番組は複雑な経過をたどっている。第一部では、製作過程を「製作過程ドキュメント」として簡略に示した。この事実経過を確認のうえ、永田、長井氏の発言を 読んでいただければ幸いである。