パナソニック(旧松下)プラズズマディスプレイ(大阪市茨木市)の偽装請負を告発後、不当解雇されたとして、元請負会社社員の吉岡力さん(35)が同社を相手に雇用の確認などを求めた上告審判決が、18日ありました。
「偽装請負に当たる」と内部告発後に雇い止めになったのは不当と主張し、派遣先との間に「黙示の労働契約」が成立しているとして地位を認めた昨年4月の大阪高裁判決を取り消しました。
吉岡さんは製造業派遣解禁前の2004年から就労。05年5月に大阪労働局に偽装請負を内部告発後、大阪労働局がプラズマ社に是正指導した。その後、期間工としてプラズマ社と雇用契約を結んだが、5ヶ月で06年1月末で期間満了を理由にに雇い止めされました。
最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長・竹内行夫裁判官・今井功裁判官・古田佑紀裁判官/葛飾ビラ弾圧事件と同じ法廷で同じ裁判官)の判決は、「派遣法の規定に違反していた」として偽装請負だと認定。しかし、プラズマが採用に関与していないなど形式だけみて雇用責任を認めませんでした。
一方、直接雇用されてから不必要な作業を強いられ、雇い止めされたことについて「申告に起因する不利益な取り扱い」と指摘。一、二審同様に違法行為の損害賠償を命じました。
小法廷は「労働者に作業を命令できるのは雇用した請負会社に限られ、発注者が直接命令した場合は、発注者と請負会社間の契約は『請負契約』とは評価できない」と判断。吉岡さんは請負会社でなく、プラズマ社の命令で作業していたとして「労働者派遣法に違反していた」と指摘。
しかし、実質は違法な派遣で偽装請負と認められる場合、請負会社と結んだ雇用契約が無効になるかどうかについては、派遣労働者の雇用安定をうたった労働者派遣法の趣旨を踏まえ「派遣法に違反したとしても、特段の事情がない限り、そのことだけで雇用関係は無効にならない」と判断。
そのうえで「脱法的な労働者供給にあたる」として、吉岡さんと請負会社との雇用契約を無効とした2審の判断を覆した。吉岡さんとプラズマ社との関係については「採用や給料の決定に関与しておらず、雇用契約は暗黙のうちに成立していない」とした。
その一方で、プラズマ社が吉岡さんを配置転換した点については、偽装請負の告発に対する報復と認定した2審の判断を追認。「雇い止めも不利益な扱いに当たる」として計90万円の賠償命令は支持した。
矛盾している判決です。
「不法行為を許すことは認められない!社会的に許されない!」
判決後、原告の吉岡さんは「雇用を切られるのは生活の糧がなくなるということ。偽装請負で働いている人には労働者としての地位がないという内容で、判決は社会的に許されない」と怒りを込めて抗議した。
代理人の村田浩治弁護士は「形式的な判断で期待外れの内容。最高裁は労働実態に立ち入って判断を示すべきだった」と指摘。
「吉岡さんを松下電器の職場に戻し、人権侵害・不当な雇い止めをなくす会」主催の報告集会には、広い講堂に入りきれずロビーまであふれた。(写真下)
吉岡さんの最高裁での闘いは、ナショナルセンターの違いを超えて、短期間に15万を超える個人署名と3000を超える団体署名をあつめ、最高裁に提出したことが報告された。
彼の後に続いて裁判を闘うパナソニック電工の佐藤さんとキャノン非正規労働者組合の阿久津さん、エネゲート「職種偽装」裁判原告吉岡さん、日本基礎技術試用期間解雇裁判原告本田さん、若い労働者たちの怒りと決意をこめた挨拶。
なかまユニオンの井出窪委員長は、「(今日の判決で)新しい段階に入った。次に続くたたかいの道をさし示した。全国の仲間が手をつないでたたかっていく。」「豊かな共闘が私たちの財産だ。21日からデモをかける。『パナソニックに吉岡さんをを職場に戻せ!』と」参加者にお礼と報告。
最後に、吉岡さんは怒りを込めてたたかいを振り返り報告し、「職場に戻るまであらゆる力を尽くしてたたかいますのでよろしくおねがいします」と挨拶し、仲間のすべてのたたかいの勝利めざして「団結ガンバロー」を唱和。