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 最高裁が葛飾マンションビラ配布弾圧事件の判決期日を11月30日に再び指定したことに対して、言論表現の自由を守る会は抗議と期日指定の取り消しを求め、あわせて板橋高校君が代弾圧事件の無罪判決を求めて25日に最高裁要請行動を行いました。

 要請には、言論・表現の自由を守る会の垣内つね子事務局長と水村由香事務局員、国際人権活動日本委員会代表委員の吉田好一さんと事務局の松田順一さん、ジャーナリストの山崎淑子さんが参加。

 会は、10月28日の千葉景子法務大臣要請の資料と、11月5~6日に和歌山で開催された日弁連の第52回人権擁護大会の資料なども提出。
 
 板橋高校君が代弾圧事件・藤田先生を応援する会の要請文も読み上げ、参加者全員が期日指定の取り消しと、憲法98条でうたわれている国際人権規約を遵守し、大法廷を開いて憲法の厳格な審査も行い歴史的・公正な審理を尽くすよう求め発言しました。

■ 言論・表現の自由を守る会 

葛飾ビラ配布弾圧事件 上申書
                       2009年11月25日
最高裁判所 第二小法廷 今井 功 裁判長 殿
      NGO 言論・表現の自由を守る会
     Japanese Associationn for the Rights to Freedom of Speech
 
         抗議

 世界人権宣言60周年に、昨年の12月24日以来、当会が三度にわたって十分な資料を提供し要請してきたにもかかわらず、最高裁において、葛飾マンションビラ配布弾圧事件について国連自由権規約委員会の勧告をも無視して、大法廷を開くことなく国際人権規約に照らして公正な審理を行わないまま、再び判決期日を11月30日に指定したことに対して、改めて厳重に抗議し、期日指定の取り消しを求めます。

         要請

 最高裁において、今井裁判長と裁判官は葛飾マンションビラ配布弾圧事件11月30日の判決期日指定を再度取り消した上で、「法の番人」として市民の表現の自由について、国連自由権規約委員会の勧告を受け入れ、大法廷も開き、国際人権規約と日本国憲法に照らして厳格な審査を行い国民の参政権に関わる重要なビラの配布行為の“表現の自由”について公正で歴史的な審理を行うよう求めます。
 大法廷での口頭弁論を行い国際人権規約と憲法に照らし厳格な審査で人権を守る歴史的な判決を求めます。
 世界人権宣言60周年に、国際人権規約を誠実に遵守し公正・厳格な裁判で荒川さんを無罪とするよう要請します。

 
 昨年の立川テント村最高裁判決において、今井功裁判長は中川了時裁判官、津野修裁判官らと全員一致で共に国際人権規約に照らした判断を行なわなかったばかりか、さらに「本件被告人らの行為を持って刑法130条前段の罪に問うことは、憲法21条1項に違反するものではない」として、憲法上の表現の自由に対する優越的な地位にも目をそむけて厳格な審査を行わないまま有罪判決を出しました。

 日弁連の第52回人権擁護大会では、この間のこうした政治的なビラ配布行為に対する言論弾圧事件が有罪とされていることに対して危機感を持って、初めて分科会が設けられ、第1分科会の第1テーマとされ「表現の自由を確立する宣言~自由で民主的な社会の実現のために~」と題した決議も挙げられました。

 この宣言の冒頭には「憲法21条1項が保証する表現の自由は、民主主義の死命を制する重要な人権である。自由で民主的な社会は自由な討論と民主的な合意形成によって成立するのであり、自由な意見表明が真に保証されていることが必要である。」と述べ、下記の宣言がされました。
 「当連合会は、これまで表現の自由や報道の自由等の重要性を訴え、それが最大限に保障されるべきことを表明してきている。
ところが、昨年来(中略)、また、近年、政府に対する批判の内容を含むビラを投函する行為に対して、住居侵入罪または国家公務員法に基づいて市民や公務員が逮捕されたり、起訴されて有罪判決が下されたりするなど刑罰をもって市民の政治的表現の自由が脅かされる事態が生じている。市民が意見を表明する重要な手段の一つであるビラの配布を、警察、検察及び裁判所が過度に制限することは、ビラの配布規制にとどまらない市民の表現の自由の保障一般に対する重大な危機である。さらに、表現の自由が保障されなければならない選挙運動においても、公職選挙法に基づき、戸別訪問が禁止され選挙期間中に配布できる文書図画の数や形式が制限されている。重要な表現手段であるビラ配布などに対するこのような現状について、2008年10月、国際人権(自由権)規約委員からも懸念が表明され、表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきであるとの勧告がなされたところである。(中略)
よって当会は以下の通り宣言する。

1、 民主主義社会における市民の表現行為の重要性に鑑み、市民の表現の自由及び知る権利を最大限に保障するため、

(1)国、地方公共団体、特に警察及び検察は、市民の表現行為,とりわけ、市民の政治的行為に対する干渉・妨害を行わないこと。

(2)裁判所は、「法の番人」として市民の表現の自由に対する規制が必要最小限であるかにつき厳格な審査すること。

(3)政府及び国会は、市民の政治的表現の自由を確保するため、早急に公職選挙法及び国家公務員法などを改正すること。
(中略)
 当連合会は、今こそ表現の自由と知る権利の重要性を強く訴えるとともに、表現の自由を確立する活動を通して、21世紀の日本において自由で民主的な社会が実現されるために全力を尽くす決意であることを表明する。
以上のとおり宣言する。
2009年11月6日 日本弁護士連合会(以上の宣言・提案理由の全文は別紙)

 この決議が挙げられた時を同じくして、今回の葛飾事件に対して日弁連の会員でもある裁判官らによって再度の期日指定が行われたことは、国民の信頼を裏切る許しがたい暴挙です。

 日弁連が、このテーマで大会を開き分科会のテーマとしていたことは、当然裁判長・裁判官のみなさんには、私たちよりも早い時期に周知されていたことは明らかです。
 中川裁判長をはじめ裁判官らは、日弁連の宣言に従って下級審に対して模範を示すうよう求めます。
 荒川さんの「犯罪とされている行為」は、平和な世界を希求する国民・地球に生きる人々にとって模範とすべき行為であり、犯罪としてはなりません。
 期日指定を取り消して公正な審理を行い、最高裁判所において、大法廷で口頭弁論を開き国際人権規約と憲法に照らし、事実にもとづいて厳格な審査を行い、荒川庸生さんを無罪とするよう要請します。
                              以 上


■  藤田先生を応援する会の要請文

     最高裁第二小法廷 今井 功 裁判長 殿

 葛飾ビラ配布事件の期日指定を撤回し、大法廷で口頭弁論を開いて下さい。

 この事件は、表現の自由と住居の平穏の権利の優先度をめぐり、一審では「社会通念上」住居侵入罪の構成要件に該当しないと無罪、二審ではいかなる目的であっても私人の財産権を侵害することは許されないと有罪、と判断が分かれたものです。
 その後、2008年4月11日「立川反戦ビラ入れ事件」が最高裁第二小法廷で上告棄却される一方で、同年10月31日には「国連自由権規約委員会」の最終報告書パラグラフ26で「表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約」について懸念が表明されました。
 ポスティング行為すべてを違法とすることに多くの国民は行きすぎを感じ、マスコミの論調の多くも強い規制に疑問を呈していた中で、国連の勧告に率直に耳を傾けるなら、大法廷を開いて慎重な審理を行うべきではなかったでしょうか。

 表現の自由と財産管理権をめぐっては、「立川反戦ビラ入れ事件」(2004年3月19日起訴)、「板橋高校卒業式事件」(2004年12月3日起訴)、「葛飾政党ビラ配布事件事件」(2005年1月11日起訴)、がいずれも同一の当時東京地検公安部の検事によって起訴されています。これらの事件は、「治安維持法」が憲法違反にならなかった明治憲法下ならいざしらず、思想良心の自由、言論表現の自由が保障される現憲法下では考えられない、微罪による刑事告発といわなければなりません。
 当時一時的に強まっていた新自由主義、新国家主義の潮流の中での出来事でしたが、過日の総選挙で国民の総意はそのような流れの転換を望んで、政権交代が実現しました。改めて基本的人権を尊重する憲法の精神と国際社会の人権水準に立ち返る時が到来しているのではないでしょうか。
 貴裁判所の再考を強く促すものです。
                           以上

        2009年11月25日
        藤田先生を応援する会