<パワー・トゥ・ザ・ピープル!!より       http://wind.ap.teacup.com/people/2925.html


◆ 主任教諭について ~実態とその問題点~

 【「主任教諭」の導入は学校現場に「格差・差別」を持ち込む】
 この4月より主任教諭制度が導入された。主任教諭について都教委は、後進の指導にあたるとともに「学校運営に積極的に貢献」し「指導監督層の主幹を補佐」するものとして位置づけている。
 だが本当の狙いは、学校現場に「統括校長」→「校長」→「副校長」→「主幹」→「主任教諭」→「教諭・実習教員」という“階層構造”を作り上げ、上意下達の命令系統を徹底させ、都教委・管理職の支配体制を構築し、そして賃金等の処遇に“格差・差別”を持ち込むことにある。

 【全員が主任教諭になれるという幻想は捨てよう!】
 都高教大会で配布されたあるビラには「『主任教諭』導入による差別・分断を許さない」と書いてあった。「差別・分断を許さない」これはこれで正しい。しかし、「主任教諭」導入と絡めると以下の二つのことが考えられる。
 ① 主任教諭・主幹制度撤廃と1、2級教員賃金の改善のために闘う。つまり、主任教諭・主幹制度撤廃に向けた体制(不受験を含む)の構築と、秋の都労連賃金確定闘争に向けての態勢づくり。
 ② 主任教諭制度を容認し、積極的に受験する。そして全員が合格するように都教委に働きかける。
 確かに、後者では一般教員(給与表2級)と主任教諭(給与表3級)の給与格差は、全員が主任教諭になることで解消するように思われる。しかし、主任教諭の定数をみても全員が主任教諭に合格することは決してない。それは組合員に「全員が主任教諭になれる」という幻想を抱かせるものにすぎない。
 やはり前者を追求し、獲得していくことが組合としての原則的ではないのか。


 【「主任教諭」は賃金改善の一環ではない】
 新給与体系では一般教員(給与表2級)は40才代なかばで昇給ストップする。
 ある執行委員は「現行給与水準を維持するためには主任教諭になるしかない」と受験を促している。これは日教組が方針として出している「新しい職の設置による賃金改善」と同じでないか。
 しかし、主任教諭(給与表3級)になったとしても、やがて昇給はストップする。さらなる賃金を得るためには主幹、副校長、校長と絶えず上位を目指して行かざるを得なくなる。“自分だけ”の賃金を守るために都教委・管理職の支配体制のコマの一部として身を置くことになるのだ。
 とくに若い教員は否が応でも“出世レース”に駆り出されてしまう。主任教諭制度は若手教員の生活をも一変させてしまう危険なものである。

 【主任教諭に対する組合としての態度は?】
 都高教大会で、或る代議員らは主任教諭導入による差別・分断を許さないと言いながらも「現行賃金を維持するために受験した」「組合員の賃金を守るために分会全員に受験を促した」「OJTを利用して(組合員獲得の)オルグしよう」「全員合格の道を切り拓け」など積極的に受験を勧める発言があった。
 それは主任教諭制度を容認し、都教委に手を貸し、その仕事を肩代わりすることである。そして組合員が率先して組合内における差別・選別・分断を行うことを意味しないだろうか。

 【現場では何も変わっていないのか?主任教諭体制は進行中である】
 同じく都高教大会において「現場では何も変わっていない」という発言があったが、本当だろうか。
 実際には、推進者研修や校内研修はすでに行われてしまっている。これらを実施させなかった学校はあるのだろうか。時間短縮や簡略化の取り組みをしたという報告はずいぶん聞いている。しかし、時間短縮や簡略化だけで“形骸化”した言えるのか。実施初年度たる今はそれができたとしても数年先、果たしてどうなるか分からないのである。
 OJTについても現在まで実質行われていないが、いずれ主任教諭に対し、“業績評価”等の脅しをちらつかせて攻撃をかけてくることは目に見えている。だがそれに対して今後の「方針」が執行部からきちんと示されていないのが実情である。と言うよりは何も示されていないのである。
 この間、義務制の教員から話を聞く機会があった。現場では主任教諭制度の実体化がかなり進んでいるらしく、若い主任教諭が他の教員に居丈高に振る舞ったり、逆に年配教員が「あなたは主任教諭だから仕事やりなさい」と言っている等、職場がバラバラになってきているという。
 今までは私たち教員同士が協同して生徒に対する教育を創りあげてきた。しかし、主任教諭の導入によりそれが困難な状況になってきている。明らかに公教育の破壊につながることは言うまでもない。そうならないためにも、執行部は中長期的な観点に立ち具体的な方針を示すべきである。

 【主任教諭の問題と賃金問題を切り離して考えよ!】
 確かに生活者たる教員にとって給与の問題は悩ましいものとなっている。では給与保障のために主任教諭を受験するのかといえば、一人ひとりに、そして職場にもっと大きな問題を抱えることになる。この主任教諭の問題と賃金問題をセットにしたことが都教委の戦略であり、職場・組合の分断・弱体化を狙ったものであることを理解しなければならない。
 今、私たちはこの二つの問題、「主任教諭・主幹制度撤廃(不受験を含む)」と「教員の賃金改善」を分離して考え、それぞれの闘いを構築すること、そして私たち一人ひとりが“自分だけのため”という意識を克服し、“自分たちのため”に団結して闘うことが大切なのである。

 『YOU SEE! in summer』(2009/8/23)
      職員会議採決禁止 主幹制度 主任教諭