<パワー・トウ・ザ・ピープル!!より>
パソコン導入で加速する教育の統制と画一化
■ 人間性喪失の学校の出現
MA(公立小学校勤務)
今の東京の学校でパソコン(PC)に関する話題に事欠かない。それは決して省力化や多忙化解消に繋
がる話ではなく、情報流出防止のための笑い話のようなセキュリティの強化であったり、あれもこれもP
Cで処理という、胃の痛くなるような強制力のある指示であったりするのである。
◆PCで多忙化解消するか
行政側はどうも本気でPCを導入することが教員の職務の軽減につながると思っている節がある。たし
かに軽減する部分はあるが、教員本来の「教育をつかさどる」部分はPCでできることは極めて少ない。
今年から新学習指導要領の前倒しで授業時数が軒並み増えた。会議の時間もとれず、学級事務や授業準
備は5時過ぎである。人員増以外に多忙化解消の手立てなし。「子どもの実態に合わせて、反応を見なが
ら、展開する授業」にはPC導人はほとんど意味をなさない。
◆こわ~い情報流出?
USB紛失事故が行政をますますセキュリティ強化に走らせ、教員を委縮させる。
S区では高額な指紋認証方式にかえた。仕事の持ち帰りは管理職の許可がいるため、残業する人が急
増。0区では、PCを立ち上げるまでに*三個のパスワード等を入れないと立ち上がらず、そのパスワー
ドも数ヵ月で変更の指示、使用後はPCを全部鍵のついた書庫に入れて帰るとのこと。
情報流出というけれど、住基ネットなどの広範性や情報管理の危うさに比べれば、教員の情報などかわ
いいものではないか。
◆教育の統制と画一化、情報の集中管理
H市では教室に1台、職員室に1台と、一人の教員に2台のPCが配置されている。
そして出席簿も、指導要録も、通知表もさらに週案などもPCでの様式となり、これらはすべて市で集
中管理である。子どもや保護者や教員のプライバシーはすでに市ににぎられているのである。
通知表は各校で様々な工夫をし印刷されている。到達度や三段階評価、所見欄の多いもの少ないものな
ど、そこには子どもの実態を検証し通知表を作る地道な作業がある。福岡で「愛国心」が評価に入り反対
運動が起きたことがあったが、全市一括の形式となれば、新学習指導要領に入っているのだからと簡単に
形式化し「愛国心」を通知表で評価することも起こりかねないのである。
また「使用は自由」という教員裁量が許されないなど、PCがもたらす教育の統制と画一化は大きな問
題である。
◆人を育てる場での同僚性・人間性の喪失
最近、朝会をせず「(PCの)掲示板を見ておいてください」のみで一日が始まる学校がでてきた。
「子どもを出迎えろ、同僚と顔を合わせなくともよい」というのだ。職員室で後輩に自然と伝えられた
様々な知恵。同僚性を失った職場ではもうそれもできない。
子どもと付き合うのが好き、少々汚いが手書きの学級だよりを出し、PCは苦手、こんな教員は今の学
校で評価は低い。
S区やH市ではPC持参の職員会議が始まっている。子どもの姿から教職員が議論するのでなくPC画
面が相手など、なんともお寒い状況ではないか。
「もっと子どもと向き合いたい。授業準備がしたい。」切実な多くの教員の声に、PCは答えられよう
もない。教育の右傾化をPCは後押しし、そして学校を大きく変質しつつある。
『子どもと教科書全国ネット21ニュース』66号(2009.6)
職員会議採決禁止 主幹制度 主任教諭
パソコン導入で加速する教育の統制と画一化
■ 人間性喪失の学校の出現
MA(公立小学校勤務)
今の東京の学校でパソコン(PC)に関する話題に事欠かない。それは決して省力化や多忙化解消に繋
がる話ではなく、情報流出防止のための笑い話のようなセキュリティの強化であったり、あれもこれもP
Cで処理という、胃の痛くなるような強制力のある指示であったりするのである。
◆PCで多忙化解消するか
行政側はどうも本気でPCを導入することが教員の職務の軽減につながると思っている節がある。たし
かに軽減する部分はあるが、教員本来の「教育をつかさどる」部分はPCでできることは極めて少ない。
今年から新学習指導要領の前倒しで授業時数が軒並み増えた。会議の時間もとれず、学級事務や授業準
備は5時過ぎである。人員増以外に多忙化解消の手立てなし。「子どもの実態に合わせて、反応を見なが
ら、展開する授業」にはPC導人はほとんど意味をなさない。
◆こわ~い情報流出?
USB紛失事故が行政をますますセキュリティ強化に走らせ、教員を委縮させる。
S区では高額な指紋認証方式にかえた。仕事の持ち帰りは管理職の許可がいるため、残業する人が急
増。0区では、PCを立ち上げるまでに*三個のパスワード等を入れないと立ち上がらず、そのパスワー
ドも数ヵ月で変更の指示、使用後はPCを全部鍵のついた書庫に入れて帰るとのこと。
情報流出というけれど、住基ネットなどの広範性や情報管理の危うさに比べれば、教員の情報などかわ
いいものではないか。
◆教育の統制と画一化、情報の集中管理
H市では教室に1台、職員室に1台と、一人の教員に2台のPCが配置されている。
そして出席簿も、指導要録も、通知表もさらに週案などもPCでの様式となり、これらはすべて市で集
中管理である。子どもや保護者や教員のプライバシーはすでに市ににぎられているのである。
通知表は各校で様々な工夫をし印刷されている。到達度や三段階評価、所見欄の多いもの少ないものな
ど、そこには子どもの実態を検証し通知表を作る地道な作業がある。福岡で「愛国心」が評価に入り反対
運動が起きたことがあったが、全市一括の形式となれば、新学習指導要領に入っているのだからと簡単に
形式化し「愛国心」を通知表で評価することも起こりかねないのである。
また「使用は自由」という教員裁量が許されないなど、PCがもたらす教育の統制と画一化は大きな問
題である。
◆人を育てる場での同僚性・人間性の喪失
最近、朝会をせず「(PCの)掲示板を見ておいてください」のみで一日が始まる学校がでてきた。
「子どもを出迎えろ、同僚と顔を合わせなくともよい」というのだ。職員室で後輩に自然と伝えられた
様々な知恵。同僚性を失った職場ではもうそれもできない。
子どもと付き合うのが好き、少々汚いが手書きの学級だよりを出し、PCは苦手、こんな教員は今の学
校で評価は低い。
S区やH市ではPC持参の職員会議が始まっている。子どもの姿から教職員が議論するのでなくPC画
面が相手など、なんともお寒い状況ではないか。
「もっと子どもと向き合いたい。授業準備がしたい。」切実な多くの教員の声に、PCは答えられよう
もない。教育の右傾化をPCは後押しし、そして学校を大きく変質しつつある。
『子どもと教科書全国ネット21ニュース』66号(2009.6)
職員会議採決禁止 主幹制度 主任教諭