1977年看護職員の勧告(第157号)

正 式 名 : 看護職員の雇用、労働条件及び生活状態に関する勧告

(第63回総会で1977年6月21日採択。)

 勧告の主題別分類:看護職員 

 勧告のテーマ:特殊なカテゴリーの労働者

[ 概 要 ]

 同時に採択された同名の条約(第149号)を補足する勧告。看護業務及び看護職員に関する政策、教育

及び訓練、看護の実務、参加、進路開発、報酬、作業時間及び休息時間、労働衛生上の保護、社会保障、

特別雇用措置、看護学生、国際協力及び勧告の適用方法について71項目にわたり詳細に規定する。付属書

として30項目の規定をもつ「実際的適用に関する提案」がついている




看護職員の雇用、労働条件及び生活状態に関する勧告(第157号)


 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十七年六月一日にその第六十三回会期として会合し、
 住民の健康及び福祉の保護及び向上において看護職員が保健の分野における他の労働者と共に果たす重要な役割を認識し、
 地域社会の必要に適した看護業務の提供を確保するために、政府と関係のある使用者団体及び労働者団体との間の協力を通じて保健業務を拡大することが必要であることを強調し、
 看護職員の使用者としての公共部門が看護職員の雇用条件及び労働条件の向上において特に積極的な役割を果たすべきであることを認識し、
 資格を有する者が不足し及び現存の職員が必ずしも最も有効に活用されていない多くの国における看護職員の現状が有効な保健業務の発展に障害となつていることに留意し、
 看護職員が、差別待遇、結社の自由及び団体交渉権、任意調停及び任意仲裁、労働時間、有給休暇及び有給教育休暇、社会保障及び福祉施設並びに母性保護及び労働者の健康の保護に関する文書等雇用及び労働条件に関する一般的な基準を定める多くの国際労働条約及び国際労働勧告の対象となつていることを想起し、
 看護が遂行される特別な状況にかんがみ、看護職員が保健の分野におけるその役割に相応し、かつ、看護職員にとつて受け入れ得る地位を享受し得るようにするための特に看護職員に適用される基準によつて前記の一般的な基準を補足することが望ましいことを考慮し、
 次の基準が世界保健機関との協力の下に作成されたこと及びその適用を促進し及び確保するため同機関との協力が引き続いて行われることに留意し、
 前記の会期の議事日程の第六議題である看護職員の雇用、労働条件及び生活状態に関する提案の採択を決定し、
 その提案が勧告の形式をとるべきであると決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百七十七年の看護職員勧告と称することができる。)を千九百七十七年六月二十一日に採択する。


Ⅰ 適用範囲


1 この勧告の適用上、「看護職員」とは、看護及び看護業務を行うすべての種類の者をいう。
2 この勧告は、職務を遂行する場所のいかんを問わず、すべての看護職員について適用する。
3 権限のある機関は、関係のある使用者団体及び労働者団体が存在する場合にはこれらの団体との協議の上、奉仕的に働く看護職員に関する特別な規則を定めることができる。この規則は、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ及びⅨの規定を損なうものであるべきではない。


Ⅱ 看護業務及び看護職員に関する政策


4(1) 各加盟国は、一般的な保健計画のわく内において、及び保健業務全体のために利用し得る資源の範囲内において、住民のできる限り高い健康水準を達成するために必要な量及び質の看護の提供を意図する看護業務及び看護職員に関する政策を、国内事情に適する方法によつて採用し及び適用すべきである。
 (2)  (1)の政策は、
   (a) 保健の分野における他の労働者の代表者との協議の上、保健業務の他の側面及び保健の分野における他の労働者に関する政策と調整すべきである。
   (b) 看護職のための教育及び訓練並びに看護の実務に関する法令を採用すること及びこのような法令を看護業務に対する需要を満たすために必要とされる看護職員の資格及び責任についての進展に適合させることを含むべきである。
   (c) 次のことを目的とする措置を含むべきである。
    (i)  国全体としての看護職員の有効な活用を促進すること。
    (ii) 看護職員を雇用している種々の施設、地域及び部門における看護職員の資格の最大限の活用を促進すること。
   (d) 関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、策定すべきである。
5(1) 教育及び訓練、職務の水準並びに免許を参考として決定される限られた数の種類に看護職員を分類することによつて合理的な看護職員構造を確立するため、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、措置をとるべきである。
 (2)  (1)の看護職員構造は、国内慣行に従い、次の種類の者を含むことができる。
  (a) 高度に複雑なかつ責任のある職務に就くために必要と認められた教育及び訓練を受け、かつ、そのような職務を遂行するための免許を受けた専門的看護婦
  (b) 適当な場合には専門的看護婦の監督の下で、比較的複雑でない職務に就くために必要と認められた教育及び訓練を少なくとも受け、かつ、そのような職務を遂行するための免許を受けた補助的看護婦
  (c) 専門的看護婦又は補助的看護婦の監督の下で、特定の任務の遂行を可能にする事前の教育及び(又は)職場訓練を受けた看護補助者
6(1) 看護職員の職務は、必要とされる判断の水準、決定を行う権限、他の職務との関係の複雑性、必要とされる技術的能力の水準及び看護業務についての責任の水準によつて分類されるべきである。
 (2)  (1)の分類の結果は、看護職員を雇用する各種の施設、地域及び部門における雇用構造の一層の均一性を確保するために利用されるべきである。
 (3) 一定の種類の看護職員は、特別な緊急の場合に臨時に使用される場合であつて適切な訓練又は経験を有し、かつ、適切な補償を与えられる場合を除くほか、上級の看護職員に代えて使用されるべきではない。


Ⅲ 教育及び訓練


7(1) 看護職に就くことを望む者に対し、看護職に関する必要な情報及び指導を提供するための措置がとられるべきである。
 (2) 基礎的な看護教育は、適当な場合には、当該国の一般教育制度のわく内における教育機関において、類似の職業集団に対する教育の水準と同様の水準で行われるべきである。
 (3) 法令は、看護教育及び看護訓練に関する基本的要件並びにそのような教育及び訓練の監督について規定すべきであり又は権限のある機関若しくは権限のある職業上の団体に対しそのような規定を設ける権限を付与すべきである。
 (4) 看護教育及び看護訓練は、当該国における利用可能な資源を考慮に入れて、認められた地域社会の必要に照らして組織すべきであり、また、保健の分野における他の労働者に対する教育及び訓練と調整すべきである。
8(1) 看護教育及び看護訓練には、権限のある機関によつて公式に認められた計画に従い、理論及び実習の双方を含むべきである。
 (2) 実技訓練は、認定された予防機関、治療機関及びリハビリテーション機関において、資格を有する看護婦の監督の下で行われるべきである。
9(1) 基礎的な看護教育及び看護訓練の期間は、訓練を受けるための最低限度の教育上の要件及び訓練の目的によるべきである。
 (2) 認定された基礎的な教育及び訓練には、次の二の水準があるべきである。
  (a) 病院その他地域社会の保健関係機関において、最も複雑な看護を行うとともに看護を組織し及び評価することができるようにするため充分広範かつ高度な技能を有する専門的看護婦を訓練するための高等水準。この水準の教育及び訓練に受け入れられる学生は、可能な限り、大学入学に必要な一般教育の水準を達成しているべきである。
  (b) 比較的複雑ではないが技術的能力及び対人関係への適性を必要とする一般的看護を行うことができる補助的看護婦を訓練するための中等水準。この水準の教育及び訓練に受け入れられる学生は、中等教育において可能な限り高い水準を達成しているべきである。
10 直接的及び補助的看護、看護業務の管理、看護教育並びに看護の分野における研究及び開発における最も高い責任を負うことができるように看護職員を準備させるための一層高度な看護教育の計画があるべきである。
11 看護補助者は、その職務に適する理論及び実技の訓練を与えられるべきである。
12(1) 職場内及び職場外の双方における継続教育及び継続訓練は、8(1)の計画の不可分の一部であるべきであり、知識及び技能の補充及び向上を確保するため並びに看護職員が看護及び関連科学の分野における新しい考え方及び技術を取得し及び適用することができるようにするため、すべての者にとつて利用可能であるべきである。
  (2)  (1)の継続教育及び継続訓練には、看護補助者及び補助的看護婦の昇進を助長し及び促進する計画を含むべきである。
  (3)  (1)の継続教育及び継続訓練には、就業中断期間の後における看護職への復帰を促進する計画をも含むべきである。

Ⅳ 看護の実務


13 看護の実務に関する法令は、
  (a) 専門的看護婦又は補助的看護婦としての看護の実務のための要件を明記すべきであり、必要な教育及び訓練の水準を達成したことを証明する証明書の所持が看護の実務を行う権利を自動的に意味しない場合には、看護職員の代表者を含む機関に免許を与える権限を付与すべきである。
  (b) 看護の実務を行うことを正式に免許された者に限定すべきである。
  (c) 必要な場合には、看護職における最近の進歩及び慣行に従い、再検討し及び補足すべきである。
14 看護の実務に関する基準は、他の保健職種の実務に関する基準と調整すべきである。
15(1) 看護職員は、その資格及び能力を超える職務に就かせられるべきではない。
  (2) 看護職員は、既に就いている職務につき資格を有していない場合には、必要な資格を取得するためできる限り速やかに訓練されるべきであり、また、このような資格を取得するための便宜が与えられるべきである。
16 看護職員の職務の遂行から生ずる看護職員の民事責任の問題によつて必要となる措置に対して考慮が払われるべきである。
17 看護職員に適用される懲戒規則は、看護職員の代表者の参加を得て定められるべきであり、また、国内事情に適する方法により、手続のすべての段階において看護職員の選ぶ者を代理者とする権利を含む公正な審査及び申立てを行う適当な手続を、看護職員に対して保障すべきである。
18 看護職員は、特定の任務の遂行が看護職員の宗教的、道徳的又は倫理的信念と相反する場合であつて、患者にとつて欠くことのできない看護が影響を受けないことを確保するために必要な代替的措置がとられ得るよう充分事前に異議を監督者に通報するときは、制裁を受けることなくその任務の遂行の免除を求めることができるべきである。


(続きは次号にて)