22.委員会は、締約国が第二次世界大戦中の「慰安婦」問題に対して未だ責任を認めておらず、犯罪実行者は起訴されず、また、犠牲者に支払われた補償は公的基金ではなく民間からの寄付金により財源化され、それは不十分であり、そして歴史教科書には殆ど「慰安婦」問題が言及されず、何人かの政治家やマスコミは犠牲者を誹謗中傷し、あるいはこの事実を否定し続けることに、懸念を持って記す。(第7条、8条)

     締約国は法的責任を認め、犠牲者の多数に受け入れられ、また彼女らの尊厳を回復する意味において、「慰安婦」問題に対して無条件に謝罪し、いまだ生存している犯罪実行者を起訴し、権利の問題として、すべて生存者に対して十分な補償を行う早急で有効な法的かつ行政的な措置を取り、この問題について学生や一般市民を教育し、犠牲者を中傷あるいは事実を否定するあらゆる企てに反論して制裁すべきである。


23.委員会は、締約国に向けて、あるいは経由して人身売買される人たちの(推定)人数について統計的なデータないこと、人身売買に関係する犯罪で有罪判決になる犯罪者が少ないこと、公営あるいは民間の保護施設に保護される人身売買の犠牲者の数の減少、犠牲者に対する総括的な援助の欠如、すなわち通訳のサービスや治療、助言や未払い賃金あるいは補償の請求に対する法的援助、またリハビリのための長期の援助であり、同様に滞在特別許可が犯罪実行者を有罪にするために必要な期間だけ認められ、人身売買のすべての犠牲者には認められていない事実に、懸念を抱く。(第8条)

     締約国は、人身売買の犠牲者を認定する努力を強化し、この領土へ向けて、あるいは経由する人身売買の流れに関する系統的に収集したデータを確認し、人身売買に関連した犯罪の実行者に対する処罰の方針を検討し、犠牲者保護のための民間保護施設を援助し、通訳、治療、助言、未払い賃金や補償の請求に対する法的援助、人身売買のすべての犠牲者に対する法的身分の安定化と共に長期のリハビリ援助を保証して、犠牲者への援助を強化すべきである。


24.委員会は、「外国人研修・技術実習制度」の基で締約国に来る外国人が国内の労働法や社会保障から除外され、また有給休暇もない単純労働にしばし利用されて、法令最低賃金以下の研修手当を受け、割り増し賃金もなく超過労働を強いられており、雇用主から彼らのパスポートを頻繁に奪われていることに懸念している。(第8条、26条)

     締約国は、法令最低賃金を含む最低労働基準や外国人研修生及び実習生の社会保障に関する国内法による擁護を拡大し、これらの研修生や実習生を不当に使う雇用主に適正な罰則を科し、そして現行の制度を、低賃金労働者を補充するのではなく、研修生や実習生の権利を十分に保護し、技能向上に焦点を当てる新たな計画に置き換えるよう検討すべきである。


25.委員会は、「2006年出入国管理及び難民認定法」が政治的亡命希望者に対して、拷問の危険性がある国への送還を明白に禁止しておらず、亡命希望者に対する認定率は申請件数との関係では低い状態であり、難民認定手続きの大幅な遅れが頻繁に起こるため、申請者はその期間中就労もできず、限られた社会援助のみを受けることに懸念を示す。また、亡命申請拒否の決定に対する法務大臣宛の異議申し立てを実行したとしても、大臣に審査について助言する難民審査官は独自に任命されておらず、決定を拘束する権限もないため、独立した審査ができないことに疑念を抱く。最終的に、亡命を拒否された申請者が、国外退去命令の執行の留保申請に関する却下の決定に対して、異議を申し立てる以前に退去が行われた事例の報告に関し、懸念を表す。(第7条、13条)

     締約国は、拷問あるいは虐待の危険性がある国への亡命希望者の送還を明白に禁止する観点から、「出入国管理及び難民認定法」の改定を検討し、すべての亡命希望者は、十分な国家財政による社会援助や申請手続きのすべての期間中における就労への機会と同様に、助言相談員や法的援助そして通訳との接触ができるよう、保証するべきである。また、締約国は、法務大臣により「テロリストの可能性あり」と考えられる申請者をも対象と含む、完全に独立した亡命申請組織体を設立し、亡命を拒否された申請者が申請の拒否決定に対して異議を申し立てる前に、行政手続きの結論の後、直ちに送還されないことを保証すべきである。
     

26.委員会は、公職選挙法の下、事前選挙運動期間中に配布される文書の枚数や形式に対する制限と同じく、戸別配布の禁止のような、表現の自由や公的な活動に参加する権利に対しての不合理な制限に、懸念を有している。また、政治活動を行った者や公務員が、政府を批判する内容のビラを個人の郵便受けに配布したことにより、住居侵入罪あるいは国家公務員法で逮捕され、起訴される報告に関して懸念を抱く。(第19条、25条)

     締約国は、規約第19条及び25条で保証されている政治運動や活動を、警察や検察官、そして裁判所が不当に制限することを防ぐために、表現の自由や公的な活動に参加する権利を不合理に制限している法律を撤回すべきである。


27.委員会は少年や少女に対して13歳と設定している性交合意の低年齢に関して懸念する。(第24条)

     締約国は、児童の健全な成長を擁護し、児童虐待を防ぐ観点から、少年・少女に対する性交合意の年齢を、現行の13歳から引き上げるべきである。


28.委員会は、婚外子が国籍取得や遺産相続権、そして出生登録に関して差別を受けていることに繰り返し懸念を表する。(第2条1項、24条、26条)

     締約国は、出生届に子どもが「嫡出」か、否かの記入を規定している戸籍法第49条1項の1と同様、国籍法第3条と民法900条4項を含む、婚外子に対するいかなる差別条項の法律を撤廃すべきである。


29.委員会は、レズビアン、ゲイ、両性愛者、そして性同一性障害者に対する、雇用、社会保障、医療、教育、そして法により規制されている分野における差別、例えば、公営住宅法第23条1項に例証されている既婚者と未婚の異性同士のみの適用や、実際に未婚の同性同士が公営住宅を借りることを禁止し、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の保護から同性相手を除外していることに懸念を示す。(第2条1項、26条)

     締約国は、差別が禁止されている領域に性的志向を含める観点から、それらの法律の改正を検討し、異性同士で同居している未婚者に認められている利点を、規約の26条に関する当委員会の解釈に添って、未婚の同性居住者にも同等に権利を認めるようすべきだ。


30.委員会は、20歳から60歳までの最低25年間、国民年金への掛け金を払わなければならない条件と組み合わせて、1982年の国民年金法から国籍要件の撤廃により遡及がなくなった結果、多くの外国人、特に1952年に日本国籍を喪失した朝鮮人・韓国人は事実上、年金国民制度上の年金受給の有資格から除外されていることに懸念を示す。また、1962年以前に生まれた外国人障害者の同一の申請は、国籍要件が国民年金法から取り消された時に20歳以上の外国人への条項により、障害基礎年金の受給資格がないことに懸念を表す。(第2条1項、26条)

     締約国は、外国人が国民年金制度から差別的に排除されないことを保証する見地から、国民年金法に規定されている年齢要件により影響を受けた外国人のために、過度的な取り決めを行うべきである。


31.委員会は、朝鮮語で教育している学校に対する国庫補助金が通常の学校のそれより極めて低く、日本の私立学校やインターナショナル・スクールへの寄付金と違って、税金の免除も減額もされない個人的な寄付金に多くを頼っており、朝鮮人・韓国人学校の卒業証書は、学生にとって自動的に大学入学の資格とはならないことに懸念を表す。(第26条、27条)

     締約国は、国庫援助を増額し、私立学校の寄付者に対すると同じように、朝鮮・韓国学校への寄付者に対しても同等の財政的恩恵を適用して、朝鮮・韓国学校へ十分な資金を保証し、朝鮮・韓国学校の卒業証書を真の大学入学資格として認めるべきだ。


32.委員会は、締約国がアイヌや琉球・沖縄を、特別な権利と保護の資格対象となる固有民族として公式に認定していないことを憂慮する。(第27条)
  
     締約国は、アイヌや琉球・沖縄を国内法で固有民族として明白に認め、保護するための特別措置を採択し、彼らの文化遺産や伝統的な生活様式を保全・奨励し、彼らの土地所有権を認めるべきだ。また、アイヌや琉球・沖縄の人たちが、彼らの言語の、あるいはその言語での、また彼らの文化についての教育を受ける十分な機会を提供し、通常のカリキュラムの中にアイヌや琉球・沖縄の文化に関する教育を含めるべきである。


33.委員会は2011年10月29日を第6回日本政府定期報告の提出日として設定する。締約国の第5回定期報告と当最終見解を公表し、司法府や立法府そして行政府に対すると同様に、一般国民に対して日本語と、可能な範囲で国内の少数民族の言語で広範に伝えることを要求する。また、第6回定期報告が市民団体や締約国内で活動するNGO団体に役立てられるよう要求する。


34.当委員会の手続き上のルールである規則71の5に従い、締約国は委員会勧告の上記パラグラフ17,18,19,そして21に与えた追加項目に関する情報を、1年以内に提出しなければならない。委員会は締約国に対し、残りの勧告や全体としての規約の実施状況に関する情報を、次回の定期報告の中に含めるよう要求する。