現代の貧困の特徴は「関係の貧困」=『ためのない状態』/ 異質の集まりは掛け算で急激に広がる。
宇都宮賢児弁護士が、貧困を可視化させ、貧困問題を社会的・政治的に解決させた『年越し派遣村』について、「現代日本の貧困と反貧困運動」と題して、名誉村長になった経過から反貧困運動と平和とのかかわりまで1時間の記念講演を行いました。
< 昨年暮れから新年にかけて、日本社会に衝撃を与えた『年越し派遣村』から見えてきたものはなにか?>
昨年12月24日の、全国20箇所の派遣切り電話相談には1700本の電話相談があり、アクセスは2万本。各地で派遣切りされ「寮(や社宅)を追い出され野宿している」「公園にいる」「所持金は30円」「全部なくなった」・・・殺到した。
彼らの命をつないでいくためにも日比谷公園で、あーいう年越し派遣村/テント村が開かれた。
そこには、505人の村民が登録し、1692人のボランティアが参加した。高校生や大学生も参加し、現地に届いたカンパは2315万円。
野宿をしたり帰る家がない、居場所がない、友達がいない人々も、こうしたあたたかい気持ちに触れて、「もう一度やり直そう!」それまで誰も声かけてくれなかった人も、「もう一度がんばろう!」と現在元気にがんばっている様子も交えて報告されました。
この派遣村の実質的裏方は労働組合で、昨年12月の派遣法抜本改正を求めた日比谷集会を成功させた全労連・連合・全労協のみなさんが、それまで交流もなく路線も違う組合が垣根を越えて取り組み、湯浅誠さんが村長になり宇都宮弁護士が名誉村長になったこと。
宇都宮弁護士が、貧困問題に取り組むようになったこととそのきっかけについても生き生きと語られました。
小学校3年生まで九州・国東半島の半農半漁の漁村で育ったこと、弁護士になってから2度も事務所を首になった経歴・・・を紹介。
イソ弁で法律相談がなかなか来ない時に、1978年当時出資法制限金利が102パーセントで、サラ金相談が急増しその相談を受けて以来、その後グレーゾーンの廃止の取り組みをして現在に至っている。
グレーゾーンの廃止の取り組みをした経験から、ウイングを広げ手を結べるところは、どういうところでも手を結び、圧倒的に不利な状況のなかでも、情勢を切り開くことができると確信。
また、なぜサラ金に手を出すのか?といえば、それは低所得、生活苦があるからで、債務整理から生活再建をどうするか!が重要であり、これを解決するための当面の課題は、普通に働けば人間らしい生活できるようにすることと働けない時でも人間らしい生活ができるようにすることが重要だ。
フランスやドイツにはサラ金やヤミ金は存在せず、セーフティーネットがあるが、現在の日本は、アメリカに次ぐ貧困大国で、セーフティーネットがなくなっている。
現代の貧困の特徴は「関係の貧困」=『ためのない状態』で、経済の貧困のほかに人間的孤立、社会的孤立がある。貯金、頼るべき人、友人、帰る実家もない!
しかし、こうした人々も、支援を受けて被害者の会や労働組合などで、自分も人の役に立てるという生きがいや張り合いを見い出している。
労働組合は分断された労働者が新しい家族や友達をつなぎ合わせる役割を持っている。
当事者が一息つける居場所を作り、イデオロギーや政治的立場を超えて取り組み、反貧困の一点で協力することが重要!
同質の集まりは足し算だが、異質の集まりは掛け算で運動が急激に広がる。
平和運動は底辺ではつながっている。失業率が高い今、ハローワークに行っても正社員の仕事がない。しかし、「ひとつだけあった。それは自衛隊」という現実がある。貧困は容易に戦争と排外主義に結びつく。
貧困問題を社会的・政治的に解決するためには、消費者運動、労働運動、社会保障運動の垣根を越えた連携・連帯と、イデオロギーや政治的立場を超えた協力協働が大切になってきている。
反貧困運動と平和運動の連帯を!
最後に、権利闘争の前進を祈願されて講演終了しました。