2009年の国際女性の日(3月8日)に向けてILOが3月5日に発表した年次刊行物「Global employment trends for women(世界の雇用情勢-女性編・英語)」の2009年版は、経済危機によって世界全体で女性失業者数は2007年より最大2,200万人増加する可能性があるとし、これは持続可能で社会的に公平な成長に向けた道に新たな障害を置くこととなり、女性のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をますます難しくすると警告し、男女格差に取り組む「創造的な解決策」を呼びかけています。
2008年に就業者数は世界全体で30億人で、うち女性は12億人(40.4%)であったと推計されますが、報告書は男女双方にとって労働市場の情勢は 2009年に世界的に悪化し、失業率は世界平均で6.3~7.1%に達する可能性があるものの、女性の場合は6.5~7.4%(男性は6.1~7.0%)と予測されると記しています。
この結果、失業者数は2007年より2,400万~5,200万人増えると予測され、うち女性は1,000万~2,200万人としています。同時に、不安定雇用、低収入、低生産性を特徴とする脆弱な就業形態にある人の割合(就業者全体に占める無給の家族従業者と個人事業主の割合として計算)は2009年に女性が50.5~54.7%、男性が47.2~51.8%と予測され、脆弱性が高いのは依然として女性であるものの、危機により脆弱な雇用に従事する男性の割合が増えていることが示されています。
報告書はさらに、景気後退が深まる中、世界的な雇用危機は2009年に急激に悪化する可能性を指摘しています。
失業率で見ると、ほとんどの地域で経済危機は女性の方により大きな影響を与えると見られますが、これが最も明確なのは中南米・カリブ地域で、逆にそれほどでないのは、東アジア、先進諸国、欧州連合(EU)外の南東欧諸国、独立国家共同体(CIS)諸国といった、経済危機前から雇用機会の点で男女格差が少なかった地域が挙げられます。
「女性は就業率が低く、財産や資金を管理できる力も弱く、より収入が低い、インフォーマル雇用や脆弱な就業形態に集中し、社会的保護の点でも不利であるといったように、あらゆる要素が危機を切り抜ける女性の立場を弱くしており、女性は長時間労働や複数の低収入の仕事に就くといった形で対処している可能性があるものの、それでも家族の世話という無償の負担を維持しなくてはならない」と、ILO男女平等局のジェーン・ホッジス局長は指摘しています。
フアン・ソマビアILO事務局長は国際女性の日に向けたメッセージの中で、古くから見られる仕事の世界における男女不平等が危機によって悪化する可能性を指摘し、経済・金融危機の影響は働く女性の枠を越え、社会の全体的な安定性に影響を与えており、女性が果たしている様々な役割を考慮すると、男女平等をあらゆる政策対応の主要原則とすべきと訴えています。
そして、女性が担っている負担のバランスを変える助けになり、グローバル化の影響に対処する政策措置として、男女双方に開かれた持続可能で質の高い仕事、労働市場における女性の弱い立場を認識した失業給付や保険制度を含むより幅広い社会的保護、意思決定プロセスに女性を積極的に取り込んだ社会対話などを挙げています。
(略)
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ILO(国際労働機関)駐日事務所
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(写真は、事務所前のすずらんです。今年もたくさん咲きました。)