2008.10.13 
言論・表現の自由を守る会の国連規約人権委員会への民の声レポート   
 
緊急に、日本政府に対して
国際人権規約選択議定書の早期批准と戦争宣伝禁止を勧告して下さい。

 21世紀の今の日本で、第2次世界大戦下のミュンヘン大学で、反戦を訴えたビラの配布を理由に、若者たちが逮捕されギロチンにかけられた『白バラの祈り』と同じような事件が相次いでいます。ギロチンにこそかけられないものの、政治的なビラを配ったことで裁判にかけられ、地方裁判所、高等裁判所、そして最高裁判所においても日本国憲法と国際人権規約に違反する日本の法律により次々と有罪とされています。

 6事件(裏面参照)で『犯罪だ』とされた行為は、民主主義国において、民主主義の根幹である政治と選挙に関する正当な行為です。これは国民が日常不断に努力し積極的に行われるべきことで、民主主義社会において賞賛されるべき行為です。しかし、日本では戦後も、公職選挙法の戸別訪問と文書頒布禁止規定で有罪になった人だけでも9万人もの人々が『犯罪者』とされています。
日本の裁判所は、「表現の自由」などの保障を明確にする憲法判断を行うべきです。しかし、日本の裁判では日本国憲法および国際人権規約が生かされておらず、いまだに重大な人権侵害の弾圧事件が続いているのです。
日本政府は、1979年に国際人権規約批准した当時から選択議定書も「早期に批准する」としていたにもかかわらず、いまだに批准しておらず、判決には生かされていません。
 被害者達の人権は、一刻も早く回復・救済されなければなりません。
これらの弾圧事件の背景には、日本が海外で戦争をすることができるようにするために憲法9条を改正しようとする勢力の動きががあります。これに立ち向かう国民の声や広がる運動を抑圧するために、市民にとって最も手軽で安価な意思表示と伝達手段である『ビラ/ニュースレター』を使った言論・表現の活動を攻撃し弾圧しているのです。重大な基本的人権を侵害しながら、戦争の放棄をうたった憲法9条を、廃棄しようとすることは、国際人権規約20条に違反する『戦争宣伝』だと考えます。
日本政府が、再び日本を戦争をする国にしようと準備していることは国際平和にとって重大な問題であり、国連人権理事会理事国の資格にもかかわる重大な問題です。
 世界人権宣言60周年に、規約人権委員会において、国際平和と人権尊重の流れに逆行している人権理事国である日本政府の、深刻な人権侵害の調査と是正勧告処置を早急にとられることを求めます。

No1 ビラ配布弾圧6事件の最初の事件 
 イラク戦争開戦直後、2003年4月の市議会議員選挙でトップ当選した日本共産党市議会議員の大石忠昭さんが、告示の8日前に後援会員に後援会ニュースを配ったことが、公職選挙法(戸別訪問及び文書配布の禁止条項)違反だとして、当選直後(2003年5月)に逮捕された。21日間も拘留・自白強要の後に起訴され、1審は、公民権停止3年罰金15万円。2審では、公民権停止をはずさせたものの罰金15万円の有罪判決。
 最高裁に上告趣意書提出2カ月後の今年1月に、上告棄却し有罪判決を確定。
 その判決文では、公職選挙法の規定は『市民的および政治的権利に関する国際人権規約19条、25条に違反しないと解されるから、前提を欠き上告理由にあたらない』と、自由権規約の比例テストも行わずに、推測で不当判決を出した。
No2 2番目の事件 2004年2月に、自衛隊立川宿舎に「自衛隊のイラク派兵反対!」のビラを投かんした市民団体メンバー三人が住居侵入罪で逮捕された立川ビラ弾圧事件。
 逮捕2カ月前から、自衛隊の情報保全隊が警察と共謀して、市民を対象に監視活動を行っていた。彼らの逮捕は仕組まれ、勾留期間は約二カ月半に及んだ。二審の東京高裁では逆転有罪とされ、今年4月に最高裁は、弁論を行わせず上告を棄却し、三人は罰金20万円ないし10万円が確定した。
No3 3番目の事件は、国家公務員の堀越明男さんが、2003年4月の選挙の時から公安警察に尾行され、11月の総選挙で、『憲法を守ろう』と書いたビラを配ったことを、それが、休日に職場と遠く離れている自宅近くでのことだったにもかかわらず国家公務員法違反だとして、翌2004年3月に逮捕。2日後には起訴された。2006年地裁で、罰金10万円執行猶予2年の有罪判決。即控訴し、現在高等裁判所で控訴審中。
 総選挙の時、連日29日間も、のべ171人公安警察官が堀越さんを尾行した。しかも、穴を開けた鞄などにビデオを入れて盗撮(このDVD持参)し、この違法操作の33本のビデオテープを証拠に立件した。しかし、検察が証拠としたビデオのうち、いまだに24本も証拠開示を拒否したまま裁判が行われている。
No4 4番目の事件 2004年3月、都立高校の卒業式で、国歌『君が代』斉唱時に着席するよう保護者らに呼びかけた同校元教諭・藤田勝久さんは、校長らから「式の進行が妨害された」と、訴えられ威力業務妨害罪に問われた。この事件を起訴した検事は、前記市民団体の3人を逮捕・起訴した公安担当の検事。5月に東京高裁でも、元教諭を再び罰金20万円の有罪としたため、即最高裁に上告した。
No5 5番目の事件 2004年12月、長年日本共産党のニュースレター等をマンションの各ドアポストに配っていたお坊さんの荒川庸生さんが、通例の区議会便りなどを配っているところを、住民が110番通報し、警察署に連ていかれ、『私人逮捕だ』として23日間も警察署に拘留され、住居侵入罪で起訴された。
 一審は、当然の無罪で、全国の新聞各紙も社説でこれを支持したが、検察は新たな証拠は何もないのに控訴し、2007年12月に東京高裁は、罰金10万円の逆転不当有罪判決とした。
 即、彼は最高裁に上告した。
No6 6番目の事件 2005年9月の総選挙で、国家公務員の宇治橋眞一さんが、自宅から遠く離れた集合住宅1階の集合ポストにビラを配って住居侵入罪だと逮捕された。その後、所持品から国家公務員だということがわかると、「国家公務員法違反」で起訴さた。
 9月19日に東京地裁で「国家公務員法違反」で罰金10万円の不当有罪判決を言い渡されたので、控訴した。
 以上