南からうららかな陽がさしている 翁の笑みはいつもいつまでも
三鷹市立の中学校は7つあり、一中から七中までナンバリングされている。中学校は複数の小学校の学区にまたがっていることから、特定の地名とならないように配慮されているのだろう。一方で小学校は土地の名前がつけられている。三鷹市の市役所のある官庁街?に最も近い中学校は一中であり、この一中の隣にあるのが南浦小学校である。
この小学校はバス通りに面している。私が通勤に使っているバスから、小学校の校門が見える。いつもスーツの大人と小学生と着物の翁が立っていて、登校してくる生徒たちにあいさつをしていた。スーツの大人と小学生はこの小学校の先生と生徒であろう。では、着物姿の翁はどういう人なのだろうか。先生だったのか、生徒の保護者だったのか、あるいは近所の人でイベントなどで小学校に協力していた人なのか。いずれにしても小学校と何らかの関わりのある人なのだろう。
ともあれ、晴れの日も、雨の日も、雪の日も、毎日毎日、翁は校門に立って生徒にあいさつをしていた。いつもにこやかに、子供たちに会うのが楽しくてしかたがないという感じであった。
月日が流れた。寄る年波に勝てないのか、翁は椅子に座るようになった。やがて車椅子を使うようになり、付き添いの人に付き添われるようになった。そして、いつしか翁の姿は見られなくなった。
小学校の六年間は長いようで終わってみればあっという間である。その中で朝のあいさつなどは一瞬である。それでもなお、自分たちを見守っている人がいるということは心強いことである。翁の姿は子供たちの心のどこかに残り続けているのではないだろうか。
三鷹市立南浦小学校の校門。写真だとわからないがバス通りに面している。ここで毎日翁が立って登校する子供たちにあいさつをしていた。