顔となる表紙は読者に語りおりビジュアル系の彩る言葉

三つもの天、地、前の小口とはかさばる紙の逃れぬ性かな

のどの奥に吸いこまれゆく紙と紙消えいるページのあわいは白く

重厚な外函まとう豪華本そなわる価値は重きことかな

読みかけのページをそこにとどめおく細き栞のあやなす力

背表紙はまだ見ぬ読者に呼びかけるあまたの本が並びいる棚

キャッチ―な言葉が人をひきつける帯から飛びだす作者の思い

 

電子書籍が普及しました。紙は便利ではあるけれども、何と言っても重いし嵩張って場所をとります。電子化する流れは止められません。最近は記録媒体すら出番が少なくなってクラウドの時代ですよね。

ですが、紙の書籍はなくなることはないでしょう。電子化は便利でも、規格が変わったりすると読み取れなくなる可能性があります。電源喪失の場面でも紙の書籍は詠むことができます。時代を超えて残るのは、電子化された情報ではなくてエジプトのピラミッドの壁画だとも言われます。そんな大きなことよりも、単純に紙の書籍は、その手触りや匂いなどがいいですよね。重くて嵩張るという欠点は魅力であるとも言えます。

というわけで、紙の書籍をテーマに連作をつくってみました。本を綴じたときの背表紙を除く3方を「小口」といいます。なお、本の背表紙の反対側において、上側を「天」又は「あたま」、下側を「地」又は「けした」と言い、側面の開くところのみを「小口」ということが多いようです。この小口に対して本を綴じる側のところを「のど」といいます。他にも書籍の用語があり、調べてみると興味深いです。

 

一首目から七首目までの最初の文字に続けて一首目から七首目までの最後の文字をつなげると、「かみのじよせきばなくならない」となります。

初出かばん誌2023年9月号