芦ノ湖が生まれてわずか三千年 今も煙を吐く神の山

自然との調和かそれとも対立かオブジェはまわる箱根の森を

五月雨の降りしきるなか紫陽花が車窓に映るそれはミラージュ

古の箱根の関が今の世に江戸の文書が歴史を紐解く

登り坂を若者たちが走りゆき神があらわる箱根の山で 

坂のあるフランス式の庭園の薔薇の香つよき強羅公園

黒々としている硫化鉄の殻を割ればたまごの中身は白し

闇のなか蛍の光に(いざな)われ険しき山をゆく登山電車

 

 箱根では、50万年前に火山活動がはじまりました。その後、大小の様々な火山活動が起こって今の箱根周辺の地形ができました。芦ノ湖ができたのは約3000年前。噴火活動がきっかけです。人間の感覚からすると随分前の話ですが、地質学年代からすればつい最近のことです。箱根周辺ではずっと火山活動が続いていると言えるのですね。

 火山のあるところは風光明媚なところが多く、箱根にはいろいろな観光地があります。自然もいいのですが、美術館や公園もたくさんあります。

 彫刻の森美術館では、屋外の多くのオブジェがあり、大人も子供も楽しめます。人工物であるのに周りの自然にマッチしているところがいいです。

 強羅公園は、傾斜面につくられたフランス式の公園です。一般的なフランス式の公園は、平なところに左右対称につくるのだそうです。和洋折衷ということでしょうか。

 箱根登山鉄道は、箱根湯本から強羅までを結ぶ電車です。急な斜面を登るためジグザグに走り、途中進行方向を逆にするというスイッチバックをします。6月にはあじさい電車が運行します。夜にはライトアップもされ、とれもきれいです。運がよければ蛍も鑑賞できるかも。

 

一首目から八首目までの最初の文字に続けて一首目から八首目までの最後の文字をつなげると、「あしさいのさくやまをゆくでんしゃ」となります。

初出かばん誌2023年6月号