寒いねと話しかけても返事せぬ熱を集めぬ曇りの太陽

井戸の底熱き地熱に触れもみで君は知らんや電気の行方

瀬をはやみ発電をする滝川のダム湖が為した森の屍

幾山河越えさり行かば煌めきのメガソーラーは森を刈り取る

風車回れよ回れうまれ出る大きな音に小さな電気

野良の木と牛のうんこよ聞いてくれバイオマスとはどれだけのパワー

 

 磁界中の導体に電流が流れると力が発生します。これをローレンツ力といいます。反対に、磁界中の導体に力を加えると電流が流れます。これを電磁誘導といいます。発電はこの電磁誘導を利用します。タービンに力を加えることで電流が流れます。現在、商業的に用いられている大多数の発電は、このタービンに力を加えて回転することによります。

 タービンを回すのに、水が落下する位置エネルギーを用いるのが水力発電、風力を用いるのが風力発電。水蒸気圧によってタービンを回すのもののうちで水蒸気圧を発生するエネルギーとして、原子力を用いるのが原子力発電、化石燃料を燃焼した火力を用いるものが火力発電、太陽熱を用いるのが太陽熱発電、地熱を用いるのが地熱発電、バイオアスを用いるものがバイオマス発電です。太陽電池は原理が異なり、典型的には、半導体のPN接合の界面に入射した光により発生した電子を外部に取り出すことで発電しています。

 再生可能エネルギーとは、枯渇することのなエネルギーという意味の用語ですが、学術的な定義はないようです。具体例としては、太陽光、太陽熱、風力、地熱、バイオマスなどが挙げられます。ここに挙げたエネルギーは本当に再生可能なのでしょうか。最近はメガソーラーなどで問題点が明らかになってきました。森林を大量に伐採して自然にやさしいなんてことはないですよね。大きなエネルギーを得るのであれば自然に負荷がかかり、自然に負荷がかからないのであれば大きなエネルギーは得られないというのが現実でしょう。

 別に再生可能エネルギーを全否定するものではありません。全面的にいいものだとするのは間違いだということです。エネルギーのベストミックスといった現実的な解を模索するべきでしょうね。

 

 再生可能エネルギーをテーマに連作をと考えていたら、風車回れよ回れが頭に浮かびました。それで、今月は本歌取りだ!ということで挑みました。与謝野晶子や若山牧水の著作権なんて消滅していますが、俵万智さん、栗木京子さん、穂村弘さんはご健在だから少しどきどきします。再生可能エネルギー推進派? 3人とも超有名人でさんざん本歌取りされているから気になさらないでしょうけど。元歌を作者と歌集とともに掲載しておきます。

 

寒いねと話しかけたら寒いねと答える人のいるあたたかさ 俵万智「サラダ記念日」

柔肌の熱き血潮に触れもみで悲しからずや道を説く君 与謝野晶子「みだれ髪」

瀬を早み岩にせかるる滝川の割れても末に逢はむとぞ思ふ 崇徳院「詩花集」

幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく 若山牧水「海の聲」

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生 栗木京子「水惑星」

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい 穂村弘「シンジケート」

 

 この連作が折句であること歌会で読み解いた人がいたのですね。それまでは誰にも月詠の折句は気づかれずにいました。そういった意味で私にとっては記念碑的な連作です。ちなみに、その歌会で五首目の「風車」を「ふうしゃ」と読めば再生不能エネルギーだなんて指摘した人がいました。これには作者もびっくり。ルビが振っていないとはいえ定型に収まるように「かざぐるま」と読むのが自然でしょうが、こういう思いがけない指摘があるので歌会は楽しいものです。

 

 一首目から六首目までの最初の文字に続けて一首目から六首目までの最後の文字をつなげると、「さいせいかのうえねるきー」となります。