1月 ガーネット珪酸塩のさまざまな金属がなす色彩あまた

 2月 アメシスト色をもたない水晶を紫色に変える(アイアン) 

 3月 アクアマリン ベリルの中に含まれる鉄がなす青あまりに涼し

 4月 輝けるダイヤモンドの密をなす正四面体の炭素の居場所

 5月 エメラルドその名を冠するグリーンはベリルの中のクロムが誘う

 6月 虹色に光るパールは炭カルのレンガの壁を貝殻に載せ

 7月 ルビーとは酸化アルミの中にあるクロムが染める赤血のごとき

 8月 ペリドットあざやかなオリーブグリーンは珪酸塩の鉄のなすもの

 9月 サファイアは酸化アルミの中にある鉄とチタンで青色に変化

10月 虹色の光を放つオパールはぎっしり詰まった水和のシリカ

11月 トパーズはアルミを含む珪酸塩光と熱で色変わらずや

12月 ターコイズ銅がもたらす青色にスパイダーウェブが走る原石

 

 誕生石には、いくつかの種類があるようですが、ここでは、「一般社団法人日本ジュエリー協会」(URL:https://jja.ne.jp/)のものを採りました。

 

 1月の誕生石のガーネットはケイ酸塩にさまざまな元素が混じったものです。ケイ酸塩とはケイ素原子を中心に電気的陰性の配位子が取り囲みアニオンを含んだものです。典型的なガーネットは、赤色で、ケイ素と酸素とで陰イオンをつくり、鉄とクロムを含むものです。カルシウムが乏しいと赤色となり、カルシウムが多いと緑色から褐色となるようです。他にも鉄、マンガンなどの金属の種類によっていろいろな色のガーネットがあるようです。これだけ色が異なると別の呼び名の宝石となるのが一般的なのに、なぜかガーネットと呼ばれているようです。

 

 2月の誕生石のアメシストは、微量の鉄を含む石英が自然界レベルの放射線を浴びると紫色にあります。石英は二酸化ケイ素の結晶で本来は色のないものです。それが不純物の種類によって色づくのです。紫は昔から高貴な色とされてきました。染料では紫色を出すのは困難だったそうです。

 

 3月の誕生石のアクアマリンと5月の誕生石のエメラルドは、ベリリウム・アルミニウムのケイ酸塩で、同じ仲間のベリルであり、緑柱石という和名もあります。アクアマリンは鉄が含まれていて水色、エメラルドはクロムやバナジウムが含まれていて緑色をしています。不純物の違いによって色が変わるのですね。アクアマリンもエメラルドも美しい色で人気の宝石です。

 

 4月の誕生石のダイヤモンドは、1つの炭素を中心にみるともっとも近い4つの炭素が正四面体の頂点に位置することになります。このため歪みのない結晶構造をつくることになり、密度が高く、高い硬度や高い屈折率を生み出します。屈折率が高いために全反射がおこりやすく、ブリリアンカットにより煌めきが増し、また、プリズム効果により虹色が見えます。ダイヤモンドはその美しさと希少性から、宝石の中の宝石であるといえます。

 

 6月の誕生石の真珠は、炭酸カルシウムとタンパク質からなる、多層膜を形成しています。このため、手前で反射する光と奥まで進んで反射する光とが干渉して、光沢や見る角度によって色の変化が生じたりします。貝が異物から身を守るために異物を覆うように積層します。真珠の養殖はこのことを利用するのですね。御木本幸吉が世界ではじめて真珠の養殖に成功しました。

 

 7月の誕生石のルビーと9月の誕生石のサファイアは、コランダムという酸化アルミニウムの結晶です。クロムと鉄が混じると赤系統のルビー。鉄やチタンが混じると青系統のサファイアとなります。ルビーとサファイアは色が美しく人気の宝石です。また、宝石としてはダイヤモンドについで硬度が高いです。

 

 8月の誕生石のペリドットは、鉄とマグネシウムを含むケイ酸塩です。あざやかなオリーブグリーンは鉄に由来するものです。アクアマリン、ルビー、サファイアにも鉄が含まれているのに、他の物質との兼ね合いでいろいろな色になるのはおもしろいところです。

 

 10月の誕生石のオパールは、水を含んだシリカであり、遊色という角度によって見える色が異なる現象が生じます。水を含んだシリカ自体は無色です。色が生じるのは規則正しく並んだシリカの球体のためで、真珠と同じように干渉によって見る角度によって色の変化が生じます。

 

 11月の誕生石のトパーズは、アルミニウム、フッ素、水酸を含む珪酸塩です。赤系統の色から青系統の色まで様々な色のトパーズがあり、中でも黄金色が価値が高いとされています。元々無色のトパーズが色づくのは、アメシストと同様で自然レベルの放射線を浴びることで着色します。なぜトパーズが様々な色となるのかは、不純物の組成や放射線の量などによるようです。

 

 12月の誕生石のターコイズは、トルコ石とも呼ばれます。銅とアルミニウムのリン酸塩で、あざやかな青色が印象的で、鉄の含有量に応じて青から緑までの色を呈します。古くから知られている宝石の一つです。不純物があった名残で筋状や網目状の模様ができることがあり、スパイダーウェブと呼ばれ独特の風味が生まれます。

 

 宝石といっても多種多様なものがあり、その色もちょっとした成分の量によって変わるのだから、昔から多くの人を魅了するのもわかります。宝石の輝きが何に由来するのかを考えてみるのも楽しいですよね。下記の資料を参考にほんの少しだけご紹介しました。よろしければご参照ください。

一首目から十二首目までの最後の文字をつなげると、「たんしようせきのかかやき」となります。

 

参考にした資料

奥山康子著「深堀り誕生石」

キャリー・ホール著、山崎正浩訳、石橋隆監訳、「宝石図鑑」

一般社団法人日本ジュエリー協会 URL:https://jja.ne.jp/

初出かばん2022年4月号 アメブロ2024年3月9日