量子から見える世界に導ける制御を担うラプラス変換

世に出たるスピン、フォトン、超伝導 量子ビットを生み出すレシピ

うつりゆくペアの一方が見えたなら他方も見えるまるで蜃気楼(ミラージュ)

状態を定めぬままのアルゴリズム何を思うかシュレーディンガー

交差するもつれた糸をときほぐす未来をつむぐ量子コンピュータ

 

 量子コンピュータとは、その名のとおり、量子論とコンピュータを合わせたものです。コンピュータは1ビットといってオンかオフかの状態の2値を使います。2値しかないので、電気信号と親和性がよく、高速に膨大な量の計算を行うことができます。なお、ラプラス変換とは、時間変化を伴う制御を扱うには欠かせないものです。

 一方で、量子論では、オンとオフとを同時にあらわすことができます。このようなオンとオフとが重なり合っている量子を量子ビットといいます。量子コンピュータに用いられる量子ビットとしては、電子のスピン、フォトン(光子)、超伝導などが研究されています。

 量子コンピュータでは、オンとオフの両方が重なり合った状態のまま計算をすすめていくので、膨大な選択肢から最適解を見つけ出すような問題では、ふつうのコンピュータよりも威力を発揮する可能性があります。この最適解を効率よく見いだすのに量子アルゴリズムが必要です。量子アルゴリズムがまだ考案されていない問題は、効率よく解くことができません。

 量子論において特徴的なのは、量子のもつれです。例えば、2つの電子のスピンの異なる向きが共存している場合、一方の電子のスピンの向きを観測して決定されると、他方の電子の向きも決定されるというものです。観測されるまでは2つの電子のスピンの異なる向きが共存していたのに、観測されることによって急にスピンの向きが決まるとは理解しがたいものです。量子力学の基本中の基本となる方程式を導出したシュレーディンガーが疑問を呈していた問題ですから、不思議に感じてもしかたがありません。この量子のもつれは、量子コンピュータへの応用が考えられています。もつれた糸をほどくように、量子コンピュータは難問を解くことができるのでしょうか。今後の研究が期待されます。

 などと偉そうに書いたのですが、正直に申し上げます。実のところ、量子コンピュータがわかりません。この連作をつくるにあたって、「トコトンやさしい量子コンピュータ」(山崎耕造著、日刊工業新聞社)を読んだのですが、全く理解できませんでした。作者がわからないのであれば読者もわからないでしょうね。申し訳ありません。専門用語をつなぎあわせて連作をつくってみました。専門用語のもつ呪文のような雰囲気を味わっていただければと思います。

 

各歌のはじめの言葉につづけて各歌の終わりの言葉をつなげると、「りようじこんぴゅーた」となります。

初出かばん2021年9月号一部改変