王位とうタイトルさえも道半ば頂点目指す孤高の天才

メンタルが安定してる悪手にも動じぬ心強さの要素

田楽刺しの攻めに守りは土居矢倉古き指し手を今の世に問う

遠見の角行に飛車を渡す間に玉を端まで追いかけ寄せた

受け師にも8七飛成と攻め続け勝利を手中若き益荒男

不利だった将棋の流れを変える香敵陣にらみ自玉を補強

十八歳一ヶ月での最年少二冠の王と八段の位

 

 令和2年8月20日、藤井聡太棋聖は、木村一基王位を4連勝で下して王位のタイトル戦を奪取しました。これで、十八歳一ヶ月と最年少二冠王と八段位を得ました。

 第1局は、角換わりの将棋で、後手の木村王位が9二角と遠見の角を放って飛車を取る間に、先手の藤井七段が後手玉を寄せきりました。終わってみれば先手の完勝ですが、ナイフエッジを行くような将棋であって、先手は一手の緩みもありませんでした。

 第2局は、木村王位が局面をリードしていたのですが、中盤で5三香と打って流れが変わりました。藤井七段は不利な局面でも形勢が大きく開くことはあまりありません。ですから、この将棋のように逆転勝ちもよくあります。

 第3局の時点では、藤井七段は棋聖位を奪取しました。したがって、第3局から藤井棋聖です。藤井棋聖は、攻めは田楽刺しで、囲いは土居矢倉を採用しました。土居矢倉は矢倉囲いの変形で、戦前、土居名誉名人が得意とした指し方です。そんな昔の囲いが令和の時代に復活するとはおもしろいですね。田楽刺しとは端から香車と飛車を並べる指し方で破壊力満点です。本譜では、端攻めがうまく行かないとなると、4筋から攻めを開始しました。藤井棋聖はこのように曲線的な差し回しもうまく、優位を築きました。終盤で逆転の局面もあったようですが、木村王位は咎めることができず、藤井棋聖が押し切りました。

 第4局は、序盤早々、藤井棋聖が8七同飛車成りと飛車銀交換をして、その後も攻め続けて勝ちきりました。素人にはすぐに目につく手ですが、プロ的には駒損するので指しづらい手だそうです。ちなみに、豊川孝弘七段のダジャレの同志社大学がツイッターのトレンド入りするなど話題の一手となりました。

 三首目は第3局、四首目は第1局、五首目は第4局、六首目は第2局と、時系列に並んでいません。時系列にこだわると折句にならないのです。少し残念。改変しようとも思ったのですが、難しいのでそのままにしました。

 一首目から七首目までの最初の文字に続いて一首目から七首目までの最後の文字をつなげると「おめでとう藤井聡太王位」となります。(初出かばん2020年10月号改変)。