将棋は楽し(初出かばん2020年6月号一部改変)

 

玉将は全マスに行け便利でも詰んだら終わり一番貴し

金将は斜め後ろに行けなくて玉の近くの囲いが居場所

銀将は斜めに動くすいすいと銀盤を行くスケートのよう

桂馬には他の駒にはない魅力前方の駒を飛び越す妙技

香車とうまっすぐ進むだけの駒飛車の代用ごくごくまれには

角行は遠見の角に両取りと斜めの利きで妙手があまた

飛車は行く盤上狭しと縦横に攻守にわたり主役となるもの

歩があれば攻めも守りも思うまま継ぎ歩に底歩手筋は多し

 

 将棋の短歌を作るぐらいですから、私は将棋が好きです。といっても下手の横好きです。最近は将棋を指すこともなく、観る将となりました。

 プロ棋士は対局の際に駒袋から駒を取り出し、将棋盤に駒を並べます。この並べ方には大橋流と伊藤流の2種類あります。大橋流は、中央の玉から順に、二枚の金、銀、桂、香と左右に並べていき、角、飛、最後に歩を中央から左右に交互に並べます。伊藤流は、玉から桂までは大橋流と同じで、次に歩を左から並べていき、さらに、角、飛、左右の香の順に並べます。伊藤流では、相手側に駒の利きが届くことのないように並べます。

 この連作では、大橋流に準じて八種類の駒の短歌を並べました。実は、初出では角と飛の位置が逆になっていました。飛車角という言い回しはあっても、角飛車などという言い回しはないので、引きずられてしまいました。もっとも、連作を大橋流に並べなければならないという理由はないので、間違いということではありません。ただ、何の順番と問われても答えられません。そこで、改変しました。

 八首の最後のことばをつなげると「しょうぎはたのし」となります。