日曜日。
今日も相変わらず晴れていた。
この時期は雨が降らないのだろうか。
去年も雨に降られた記憶は無い。

ジャケット着て来たの、失敗だったかなぁ…

更に、ちょっと首も痛いのよね…
凄く寝易いんだけど、ちょっと枕が高いかなぁ…

なーんて思いつつ、朝食の場へと向かうと、
そこに森西君の姿は無かった。

流石に朝食を摂らないという選択肢は無いだろうから、
早めに摂ったのだろうと考えつつ、朝食もほどほどに会場へと向かう。


準決勝に進んだ選手は既に会場入りしていたが、
3選手のリラックスしている姿を見て、
自分自身をコントロールする事が出来るのは流石だな…と思って見ていた。

向かって左側から、予選1位のヤコブ、3位の森西君。
以下5位の條さん、7位、9位の人と続き、
向かって右側の机には、2位のヤン、4位のシュナイダーと続き、
4番目には楠井さんが座っていた。

それから暫く離れた位置に数十の椅子があり、
そこに記者や予選敗退の人等の荷物が置いてある。
やや遅れて到着した予選敗退の日本勢は、
1列目には座れず、2列目に陣取る事となった。

肝心の選手達は比較的リラックス。
準決勝開始前に全選手に握手をしに回る選手もおり、
それが逆に、準決勝が近づいている事の自己主張にもなっていた。

程無くして、予選1位のヤコブから準決勝の問題を解き始めた。
58分残しの状態から時間差でスタートし、
森西君は約56分、條さんは約53分、
楠井さんは約52分の状態からそれぞれ時差スタート。
残り50分ちょうど、予選10位の人が解き始めたのを見て、
後ろの日本人応援団は…

既に返して貰っているラウンドの問題を解き始める。

…暇なの^^;

時間の制約が無いと結構簡単に解くヒントが見つかるのよね…
そしてまた、解くヒントが見つかる度にちょっと悲しくなるのよね…

去年の準決勝は、問題が簡単で完全なスピード勝負。
25分ぐらい時間を残したケースもあったのだが、
今年の問題は難易度が上がった事もあり、
準決勝も時間が少なくならないとFinish宣言は出ないのだろうな…と思っていた。

しかし、その時は突然やって来る。


残り時間が20分の段階で、私はまだ数独の問題を解いていた。
しかし、隣に座っていた日本人選手から…

「ヤン、終わったみたいですよ」との声が。
え?と思い、目線を上にすると…
予選2位通過のヤンが、全ての問題を終えているではないか。

まだ20分も残っている。
つまり、36分でヤンは問題を解き終えたのだ。
カメラマンもヤンを取り囲み、写真を撮っている。

この時私は、「今年も準決勝の問題は簡単だったのか…
森西君、スピード勝負なんだから早く手を挙げろ!」
…と、考えていた。
早く挙げてくれないと、予選トップのヤコブがいつ手を挙げるか分からない…
このままでは、今年も去年と同じ決勝になってしまう…と。

勝手に切羽詰まった気持ちになった私は、
もう既に、予選の最後まで目線を下にする事は出来なくなっていた。
食い入る様に、前の闘いを見つめる。

しかし、そこから次の人の手がなかなか挙がらない。
残り18分…残り15分…残り12分…

これ、去年みたいに簡単な問題じゃ無いな??

それに気付いた瞬間、準決勝でのヤンの人間技とは思えないパフォーマンスに、
決勝に行けても苦しい戦いになるなぁ…と考えていた。

目線を左右に動かし続けていた私。
そこに変化が訪れたのは、残り8分を切る直前であった。


残り8分2秒。
手を挙げたのは…森西君だった。

その瞬間の自分自身に対する気持ちの高ぶりは、恐らく暫くは忘れないであろう。
思わず小声で「来た!」って叫んでいた。

そこから20秒後にヤコブが終了宣言。
更に予選6位の人が5分残し、楠井さんが2秒残しで終了宣言をして、
58分間の準決勝が終わった。

このままではヤコブの連覇は途絶える。
森西君がヤコブに割って入るのか…と思いつつ、ドキドキしながら集計を待っていた。

すると、別の日本人選手から、「波乱が起きましたよ…」との一言が。

え?と思い、集計中の紙を後ろから覗き見る。
そこには、こう書かれていた。

ヤコブ:2nd
ヤン:4th
森西君:1st
(以下略)

暫く凝視して、やがて意味を理解した。

20分前に終了宣言をしたヤンが、解答を間違えているのだ。
全問正解した3人に抜かれ(楠井さんは別の問題を間違えていました)
4位と書かれていた。

それから正式に発表があり、
森西君が1位、ヤコブが2位で準決勝を通過した事が伝えられた。

ヤンは、初日に森西君がやった事と同じ過ち…
つまり、81マスの中で1つの数字だけを書き間違えていた。

パズルを解く力に関して、準決勝の問題だけで言えば、
ヤンが最も、しかもダントツで高かったと言えるだろう。
しかし、人が書き込む以上、勝負は何が起こるか分からないのである。

改めて、勝負は水物だと痛感させられる出来事であった。


決勝は、解く問題を選択して2人で同時に解き始める。
最初に2問普通の数独を2人で解いた後、
数独をベースにしたバラエティ数独8問の中から、

準決勝1位通過者が解く1問と解かない1問を設定。
→準決勝2位通過者が、残った6問から解く1問と解かない1問を設定。
これを2度繰り返して、8問のうち4問を解く。
つまり、合計6問の勝負である
(この辺りうろ覚えなんですよね…合ってるのかしら?^^;)

しかし、決勝は北京時間で15時から。
私は日本チームの中で唯一、日曜日に日本へと帰らなければならず、
その飛行機が飛び立つのが17時30分。
空港へは車で1時間半掛かるので、どうやっても見る事は出来ない。

とても名残惜しかったが、6位に入賞した楠井さんに、
頃合いになったら電話するから。
と伝えて、私は泣く泣く日本チームと離れて、北京空港へと向かった。


北京空港で搭乗手続きを待っていた私は、
16時になり、頃合いかと思い、楠井さんに電話を掛けた。

「今丁度終わったところで」と言われ、
その直後に「優勝しましたよ!」という楠井さんの声を聞いた。

決勝は、最初の普通の数独に絶対の自信を持っていた筈のヤコブが、
2問で森西君より2分も解く時間が遅くなってしまい、
更にそれが影響したのか、森西君が選んだ3問目の幾何学数独で、
10分近く時間を掛けてしまう大失敗っぷり。

その後、森西君も一度解答中の問題を全消ししたりして、
徐々にヤコブに差を詰められたものの、
結局は1問差をつけて、ヤコブに勝利したそうだ。

森西君本人は、大会前のインタビューで
記者相手に英語が通じなかった事を気にかけていたらしく、
『「これからもっと英語を勉強しなくちゃ」って言っていましたよ。』

…って言っていた楠井さんの嬉しさが、
電話越しにとてもよく伝わって来ていた。

その話を聞き終えた私は、
嬉しさのあまり、涙が出ない様に必死にこらえていた。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120520/trd12052020400020-n1.htm


その後の記事は、皆さんもご確認の通りである。
正直、私はここまで記事になるのか…と驚いてもいる。

去年、こんなに記事になってたかな…^^;

ともかく、森西君はこれで世界のトップになった。
名誉だけのWPCやWSCではなく、賞金の出る大会なのだから、
ある意味前者より凄いだろうと個人的には思う。

これからは海外からの注目も高まるのかもしれないが、
まだまだ20代前半だし、少なくとも数独に関しては、
これからも世界トップクラスであり続けて欲しいと願わずにはいられない。

そして、今度こそは、
決勝の舞台で優勝する森西君の姿を見たい。
そういう意味では、新たな目標が出来たと言えなくも無いのだろうか。

森西君、おめでとうさん^^

【第2回北京数独選手権編・完】