・メモ

ホラーティウスの書簡詩、研究室の勉強会で一部使用したこともあり、良い機会なので全部読んでみた。ホラーティウスについては前年度の授業で前後期とも諷刺詩を購読していたので違和感なく取り組むことができた。

 

諷刺詩では時として刺々しい他者への反感が感じられる文章が見られたが、書簡詩では単語の選び方に皮肉混じりなものがあることは事実だが、それほど激しい論調を感じることはなかった。基本的にホラーティウスは極めて真面目な人物であり、時として見られる皮肉な口調は、解放奴隷の息子であると言う自分の出自を常に意識しているための防衛本能から出たものではないかと思える。さらにこれは諷刺詩で顕著だったが、辛辣な文のあとでそれを取り繕うような表現が度々見られ、このあたりがホラーティウスの真面目さと気の弱さが感じられて面白かった。

 

本書では更に、書簡詩の中に「詩論」まで含まれているのに驚いたが、出だしの文面を見ると確かに手紙の形式になっている。手紙形式だと、正式な文書としての扱いではなくなりそれがある種の免責事項になるのかなと邪推してしまった。

 

[書簡詩/¥990]

[ホラーティウス著、高橋宏幸/講談社( 2017/11/10)]

[241p/978-4-06-292458-0]

[マエケーナース、アウグストゥス、ヴェルギリウス、ホラーティウス、解放奴隷、皮肉、辛辣、勉強会]

[ 講談社学術文庫2456][初図][056]