・メモ
斎藤忍随氏のギリシア文学散歩を読んでみた。著者は「ギリシア・ローマ古典文学案内」で馴染みがあったので、〜古典文学案内が初級者向けの書籍として非常に読みやすく読み応えがあったので、本書もそういった類の入門書と期待して読み始めてみたが、その期待はすぐに叶わないことがわかる。
本書は斎藤氏の講義ノートに書き込んでいたメモを元に作られたとある。斎藤氏の専門はギリシア哲学であり、その観点がベースとなっているので、その視点、考察についていくのは初学者としてはかなり厳しいものだった。
本書を通して著者が常に意識していたのは、アポーロン、それもデルポイの主人として神託を司る神としてのアポーロンである。そのため、本書の私にとっての読み応えのある部分は氏の専門であるプラトーンではなく、アイスキュロス、ソポクレースといった悲劇の描写・分析の箇所である。確かにアンティゴネー、オイディプス王というソポクレースの代表作は読んでいて非常に面白い。本書を終えてまずやらねばならないことはアンティゴネーを読むことだな。
[ギリシャ文学散歩 /¥1,320]
[斎藤忍随著/岩波書店(2007/8/17)]
[400p/978-4-00-602126-9]
[アポローンの多様性、デルポイの主人、神託、アリストテレース、ソークラテース、プラートーン、神、詩論、クレオーン、不思議なるもの数々あれど、人にまさりて不思議なるはなし]
[岩波現代文庫 文芸126][初図][030]