・メモ
ローマのバチカン美術館で展示されているラオコーン像についてその発見から、作者、作成場所、作成年代の特定や、補足部分の変遷、過去の文献における参照などを幅広く扱った作品。後期のレポート作成のために再確認してみた。
特に前半は著者セッティス氏が様々な文書に当たり、係累学の知識をも駆使し、作者、作成場所、作成時期を絞り込んでいく様子は、まるでサスペンスを読んでいるようなスリリングな展開がとてもいい。ドラマチックな構成を提示する作品だけに、この大理石で示された場面に関する記述のあるアエネーイスも再読したくなってきた。ともかく肉体的な痛み、精神的な痛み、神の都合による不条理な苦痛に対する戸惑い等を表現した傑作だと思う。
またレポートで扱う予定がないので詳細は省くが、ラオコーン群像から欠落していた右腕の形状が紆余曲折を経て現在の形状(肘を曲げて頭の後ろに配置されている)に落ち着くまでの顛末も面白い。
[ラオコーン 名声と様式/¥5,500]
[サルヴァトーレ・セッティス著、芳賀京子、日向太郎訳/
三元社(2006/8/25)]
[313p/4-88303-155-1]
[ ラオコーン、ティベリウス、ティトス、プリニウスの博物誌、ウェルギリウスのアエネーイス、ロドス島、誤った腕の修復、スペルロンガの洞窟と碑文、ペルガモンのブロンズ像、オリジナル?コピー?、スキュラ、「一つの石から」の意味、係累学、ハゲサンドロス、ポリュドロス、アテノドロス、ポルキスとカリホイア]
[単行本][再図][015]