・メモ

本書を読む対象としたのは単にタイトルが面白かったという事だけだった。ただ、読み進めるうちにぐんぐんと内容に引き込まれてしまった。この堺敏彦という男、抜群に面白いやつだ。バリバリの社会主義者であり、当局から睨まれ何度も投獄され、また暴漢にも数度襲われている。だがこの強面の横顔の一方で実にユーモアに富んだ人間思いの好漢であることがわかる。

 

幸徳秋水、大杉栄といった同志がどんどん過激化していく中でも自分を見失わず、安易に彼らに組みするようなことはしない。本人は抜群の語学力と文書作成能力があったので、売文社を組織し、文章に関するよろずや的な活動を展開していく。その活動範囲は翻訳、卒論などの代筆、キャッチコピーなどのコピーライタ的な仕事など多岐に渡る。また売文社を興したしたこと自体、行き場のなかった社会主義者たちの受け皿となって彼らに仕事を与えるためだったという動機を思うと、人間的な大きさも感じさせる。

 

両親が死ぬまでは放蕩三昧の生活を繰り返していたが、その後改心し良き夫として、良き父として、良き社会人として女性の社会進出にも理解を示していたという。いや日本人も捨てたもんではないw

 

正剛くんはこう言ってる。

 

[パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の戦い/2,620円]

[黒岩比佐子著/講談社(2010/10/7)]

[446p/978-4-06-216447-4

[社会主義者、冬の時代、ウツツ責め、平民社、売文社、大杉栄、幸徳秋水、アナキスト、共立学校、高畑素之、遠藤友四郎、山県有朋、1709夜]

[単行本][初図][002]

[BB0001]