![]() |
ボックス21 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
1,166円
Amazon |
・メモ
ある病院で起きた2つの事件、1つはポン引きの虐待から逃れて入院していたリトアニアの娼婦が地下の霊安室に人質をとり立て篭る。もう1つは入院中の薬物依存者が薬物に洗剤を混ぜた粗悪品を悪の大物の娘に売りその制裁として刑務所の顔見知りに暴行を受けるがその時の事故で死んでしまう。
娼婦は爆発物と拳銃を所持し、人質を殺害、爆破し警察にある刑事を通訳として呼び出すよう要求する。暴行した男は目撃者である薬物依存者の姉を別の男を使って脅迫し証言を覆させる。
現場に向かった刑事を娼婦は裸にし、彼の左目と股間を打ち抜き自らも頭を撃ち抜く。その後人質は無事であることが確認され、爆破された死体は霊安室に安置されていたものであったことがわかる。
被害者の姉は証言を翻し、被害者を暴行した男は例によって黙秘を繰り返すことでかえって自らの罪を暴行障害から殺人として認定され再び収容されていく。
リトアニアの娼婦に殺害されたのはエーヴェルト・グレーンス警部の同僚であり、収容された男はエーヴェルトの恋人を介護者を必要とする障害者としてしまった事件の際の被疑者であり、リトアニアの娼婦に殺害された男もそこにいた。2つの事件を同時に担当したエーヴェルトは調査を進めるうちに亡くなった同僚の男の裏の顔を知る事になり愕然とする。エーヴェルトは元同僚の妻を心情を考えこの事実を隠すが、彼の同僚スヴェンがこの事実を知る事になり彼も事実を表に出さないことを決意する。最後にこの事件のきっかけとなった人身売買、売春組織の女性協力者の意外な正体が示される。
この物語は「恥」という言葉をキーワードに進んでいる。人々にとって何を「恥」と捉えるかは様々だろう。
そして今回も全く救いのない話がこの小説の中で展開される。制裁にしろ死刑囚にしろこの物語にしろ、いずれも加害者には被害者の側面があり、自らが正しいと思った瞬間に、自分が正義なのだから何をやっても正しい、許されるとの発想のもとに自らが受けた犯罪を超える制裁を被害者(=加害者)に加える。この展開がルースルンド=ヘレストレムコンビの話の救いがない点だな。この流れを許してはいけない。個人に制裁権を与えることはリンチを誘発するからだ。読後感は不愉快極まりないが取り憑かれたように読まざるをえなかった。。。
[ボックス21/1,166円]
[アンデシュ・ルースルンド、ペリエ・ヘレストレム、ヘレンハルメ美穂訳/早川書房(2017/11/21)]
[592p/978-4151821547]
[エーヴェルト・グレーンス、リトアニア、娼婦、恥、ポン引き、大使館員、薬物中毒、悪人]
[早川ミステリ文庫 HM439-4][初店][0064]