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燃えつきた地図 (新潮文庫)
680円
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・メモ
興信所の従業員である男に持ち込まれた案件は、妻からの依頼で突如として行方不明になった男性を探すことだった。しかし冒頭からこの業務はおかしな傾向を帯びる。本気で探して欲しいのかどうか怪しい投げやりというか無頓着な妻、男の立ち回り先に偶然を装って現れる妻の弟、失踪した男の影を知っているらしい部下の若者。みんな胡散臭い。結局事件の核心に迫ることなく、弟は暴力団抗争に巻き込まれて殺され、部下だった男は話の殆どがデタラメだったことが明らかになった後であっけなく自殺し、妻は何事もなかったように勤めに出ることになり主人公は興信所を退職する。男が握っていた情報は全て断ち切られ男は頼りにする地図もないまま社会に放り出される。
読後には不快感と満たされない思いが残る。まさにこの感覚、安部公房の思う壺だな。どこかで非常に似たような経験をしたと思ったら、カフカの城を苦しみながら読んでいってやっと最後のページを開いたときに、その作品が未完のまま終わっていることに気づかされ、やり場のない怒りともあきらめともつかない感情に包まれた時とおんなじだ(^_^;) 安部公房の筆の力はみごとなものだとしか言いようがない。
[燃えつきた地図/¥637]
[安部公房/新潮社(2002/11)]
[401p/978-4-10-112114-7]
[失踪、やる気なし?、義弟、田代くん、根室洋、根室波瑠、団地]
[新潮文庫あ-4-14 2584][図初[0045]