・メモ

主に江戸時代、私塾を中心に盛んに行われていた会読という勉強方法について書かれた書籍である。会読というのは師匠が弟子に講義するという形をとるのではなく、参加者全員が対等の立場であり、まいかいのたんとうしゃが輪行形式でテキストの解説を行い、参加者の質問に担当者が答えたり、討議を重ねることで共通認識を得ていくというやり方だ。現代でいうと大学の研究室でのゼミや輪講に近い感じだな。この手法の特徴は、江戸時代に厳然としてあった上下関係、主従関係に捉われずにやった或いはやろうとしたことだと思う。実は解体新書の翻訳も会読によってなされたものだという。全員が馴染みの薄い言語の翻訳をしようとする場合、なるほど有効な手段かもしれないね。

 

そんな会読も明治時代に入り公民権運動の高まりとともに読むことよりも話すことが重要視されるようになったこと、欧米の教育制度が導入され、もっと効率的に学ぶことができるようになってきたこともあり衰退して行ったという。

 

衰退してしまったものの会読って、現代でも通用する要素を多分に含んでいると思う。もう少し古典ギリシア語の腕が上がったら、会読というものを体験してみたい。

 

[江戸の読書会 会読の思想史/¥3,456]

[前田勉/平凡社 (2012/10/15)]

[391p/978-4-582-84232-6]

[会読、陽明学・朱子学、国学、解体新書、門閥制度、素読、購読、会読、杉田玄白、前野良沢、参加者は対等、武士教育、藩校、伊藤仁斎の同志会、疑義、虚心、対等な人間関係、ルドゥス、アゴーン、読むから言うへ、欧米の教育制度、明治と言う時代、千1661]

[単行本][初][034]