・メモ
フランス領マルチニック島で黒い肌を持つ男として生まれ、フランスで教育を受け医師となり、白い肌の女性と結婚し、アルジェリア独立戦争に深く関わったのち白血病で命を落とした著者。彼が語る黒人とは何かということを語ると想像させられる表題に興味を惹かれて読んでみた。
本書で語られるのは支配される側の立場、差別される側の立場、恐れられる側の立場での話が中心というかそれしかない。作者は経歴から考えてかなりのインテリのはずで、語彙もかなり高度なものを駆使しているが、文体は情緒的というか情念にかられて書かれた感が強く、同じ話題が繰り返し繰り返し現れ、論理性の希薄な文章が延々と綴られる。
現状認識の提示の上で今後どうするか、どうして行くかという展望が語られるのかと期待して読み進めたが、現状に対する諦観めいたものの繰り返しに終始していた。また安易に黒人全体を二グロという言葉で一括りにしていたのも気になる。全ての黒い肌の人々が奴隷だったわけではないし、植民地出身というわけでもない。肌の色の濃淡は様々であり、考えも一通りではないはずなのに。この意味ではこの作品を理解することは東洋人の私には難しい。
昔読んだ山下洋輔のエッセイの中に、ヨーロッパツアーで一緒になった米国のアフリカ系ミュージシャンについて、かなりのインテリなのに、時々ホテルの部屋をめちゃくちゃにし、糞尿をぶちまけまくっていて驚愕したという話を記憶している。彼らの心の闇は限りなく深いな。私には遠藤周作の「白い顔、黄色い顔」のほうがしっくりくるな。
[黒い皮膚・白い仮面/¥3,672]
[フランツ・ファノン著、海老坂武、加藤晴久訳 /小学館(1998/9/22)]
[323p/4-622-05028-5]
[黒人とは黒い人間である、山下洋輔、遠藤周作、感情、非合理性、白人>アンティル人>セネガル人、ニグロ固有の、情念>理性、いつでも基準は白人か、反抗とあこがれ、個人としての視点は殆どない、ニグロ=性的エネルギー、ペニス、混血、千0793]
[単行本][初図][005]
![]() |
黒い皮膚・白い仮面 (みすずライブラリー)
Amazon |