父の帽子 (講談社文芸文庫)/講談社

¥1,015
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[父の帽子/¥1,015]

[森茉莉著/講談社 (1991/11/1)]

[228p/978-4061961517]

[美化されたイメージ、断言、句点、愛、千駄木、町並み、後ろ姿、団子坂、横顔、色彩、音、虎ノ門金比羅神社、minerva、千0154/1554]

[講談社文芸文庫 モB1 ][初図][102]

本を読むとき、きっかけは様々だ。書店の店先で、
図書館で、新聞の書評で、人から聞いてと、
ルートは様々ある。千夜千冊を眺めているのも
そんなきっかけを求めてのことだ。

今回読んだのは森茉莉。
どこかで、森鴎外の娘で我が儘一杯に育って
かなり気難しいとの話を読んだことがある。
はたして作品はどうだろう。

読んでみると文章の書き方に大きな特徴の
ある人だなということがまず眼に入った。
特に句読点の打ち方の独特さ、1段落の
長さが印象に残った。句読点を予想しなかった
ところに置かれると、そこで思考が一旦分断
されるので読みにくいこと甚だしかったが、
慣れてくるとそこにポイントがありそうで
かえって注意して読むようになった。

まぁ、そんな表面的なことより、特筆すべきは
森茉莉の文章力なんだろうな。
彼女の文章には日々の生活、父鴎外との思い出が
度々出てくるが、その中での色の描写、音の描写が
精緻で「おっ」と思わせる箇所が多い。

それともう一つ、父鴎外との思い出の描写だ。
確かに書いているのは森茉莉という大の大人
なんだが描写された風景は身長1メートル
そこそこの少女の視点だということがわかる。
父を呼ぶ「ぱっぱあ」という表現も、まるで
その声が間近で聞こえてくるようだ。

有名人の二世の作品で面白かったのは、
この森茉莉と吉田健一だな。

正剛さんのお話は
ここに。