- 摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)/岩波書店
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- 摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)/岩波書店
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実に不思議な日記だ。どこで何をした、
食ったと言った話が羅列され
ているのだが不思議と惹き付けられる。
特に上巻では、築地、月島、新富町、京橋、
八丁堀、日本橋、茅場町と、
私が日々歩いている界隈も荷風も歩いてたか
と思うとちょっと楽しくなる。
しかしこんな状況も、下巻になると
一変する。戦争だ。戦争の激化とともに
国内での軍関係者の横暴も目立ってくる。
庶民の生活も苦しくなる。荷風の嫌戦争感も
激しさを増してくる。東京大空襲の描写は
かなりの迫力だ。
とは言っても、荷風は荷風だ。死ぬまで
スケベ心は健在だったようだ。
それはそれとして、この日記は1959年の
4月29日で終わっている。多分ここで
命が燃え尽きたのだろう。私が生まれた
次の日のことだ。1日だけでも同じ世界に
生きてられたことをちょっと嬉しく思う。
おまけ。
本書には断腸亭日乗の他、留学中の
日記も収録されている。これが泣かせる。
不安な気持ちの日々を切々と書く
センチメンタルな荷風がここにいる。
こんな日記を正剛先生はこう評している。
- 摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)/岩波書店