東北鉱物採集旅行(其の弐)-岩手・小玉川鉱山と舟子沢鉱山 | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

0.前書き

 前日は、秋田の日三市(ひさいち)鉱山に寄っての二次鉱物の採集でした。草が茂りに茂って以前のように簡単には行けない感じになっていたので驚いてしまったのですが。林業関係者が入らなくなると誰も行かなくて、荒れに荒れてしまうのですねえ。

 

 日三市鉱山からは、国道46号線を東に進み、盛岡まで約75km、2時間ほどで盛岡駅西口に。駅の西側にあるホテルに宿を頼んだのだが、簡単に見つからず、1時間近くウロウロしてしまった。いや、最初に気がついたイルミネーションがそのホテルだったのだが、車では簡単にホテル前には行けない感じで、電話して駐車場がないことを確認し、車は盛岡駅西口の駐車場に駐めた。盛岡駅の西口は、開発が進んで人の住むような所ではないようでオフィス街なのかな。とにかく駐車場が広かったわ。歩いてホテルまで。さほど遠くなかったのがよかった。ホテルは、ネットで申し込み、宿泊のみで5500円ほど。まあ、小綺麗で良かったのは幸いでした。

 

1.待ち合わせから小玉川鉱山へ

 今回は、鉱物情報の観察会の参加のため、二戸駅で10:30の待ち合わせだったのでのんびりできた。鉱物情報の観察会で、しかも舟子沢鉱山での採集なので、よく新鉱物発見で名が知られた鈴木保光氏が案内されるのだろうと思っての参加でした。

 

 朝は、7時30分頃にホテルを出て盛岡を出発。途中で給油。盛岡駅から下道75km程で待ち合わせの二戸駅に。1時間30分もしないで着いてしまって、待ち合わせに1時間も早かった。関東や盛岡から電車で来た人は、ここで待ち合わせて、その後分乗して移動。この際に採集に参考になるたくさんの資料を頂いた。

 車で来た人との待ち合わせは、軽米IC出口で。松原聰先生も車で来られた。総勢30人近かったですね。車も9台。

 

 まずは、国道395号線を進み、小玉川鉱山へ。途中で狭い道を進んだと思ったら、あまり山らしいところでない、緩傾斜の山地中の田んぼが広がる場所で車が止まり、少し歩いて簡単に鉱山のズリに。あまり簡単だったのでビックリでした。

 

 小玉川鉱山は、層状マンガン鉱床で、ブラウン鉱、軟マンガン鉱を主に採掘した鉱山だ。ここで採集が期待される鉱物には、以下のようなものが。

 クリプトメレーン K(Mn4+7Mn3+)O16

 フェリリーク閃石 NaNa2Mg2Fe3+2LiSi8O22(OH)2

 ノリッシュ雲母  KLiMn3+2(Si4O10)O2

 (含リチウム)苦土アルベゾン閃石

          NaNa2(Mg,Fe)4Fe3+Si8O22(OH)2

 

 採集前に、フェリリーク閃石についての説明があった。フェリリーク閃石は黒っぽいが、蓚酸の溶液中で一晩浸漬すると赤っぽい繊維状のものが見え、全体に少しピンクがかってくるとの説明があったが、採集の際にはどの石も黒っぽくてよくわからなかった。

 ここの石は圧力を受けているので層状に割れる。マンガン鉱山の石だから、硬くて全体に黒く割っても割っても私には同じように見えて、何が何やらよくわからないままに終わってしまった。  

 最後に、鈴木さんが確保していた石をみんなに分けてくれたので私も頂いた。黒っぽくキラキラと黒雲母のようなものが付いた石と黄土色のような白っぽい閃石のような2種で、最初の黒い石はノリッシュ雲母とフェリリーク閃石が一緒のもの、後の白い石は含リチウム苦土アルベソン閃石だと思う。石の名前をそのときに教えて貰ったが、ラベルがなかったので、忘れてしまって確認できていない。

 

2.舟子沢鉱山へ

 次には、舟子沢鉱山へ。

写真1 舟子沢鉱山採集場所への入口

 

 採集場所の沢の入口まで舗装路で、車を駐めた辺りにはズリがあるらしい。採集のズリへは写真1の沢沿いの道に入って、10分もしないうちに、少し歩いて登っただけで到着した。これまた意外と簡単で実際には山深い所かと思っていたので驚いてしまった。小玉川鉱山とは、山の西と東側に対応するらしい。

 

写真2 舟子沢鉱山での採集場所

    この上の方にも坑口があったらしいが。

 

 舟子沢鉱山のズリで採集可能な石は以下の通り。

  軟マンガン鉱 Mn4+O2 正方晶

  アフテンスク鉱 Mn4+O2 六方晶

  ブラウン鉱 MnMn3+6(SiO4)O8

  ネルトネル鉱 CaMn3+6(SiO4)O8

  フェリリーク閃石 NaNa2Mg2Fe3+2LiSi8O22(OH)2

  ノリッシュ雲母  KLiMn3+2(Si4O10)O2

  スワインフォード石 

   Ca0.2(Li,Al,Mg,Fe)3(Si,Al)4O10(OH,F)2・nH2O

 

 以下は採集が困難ということですが。

   南部石 (Li,Na)Mn4Si5O14(OH)

  マンガンチェルキアラ石    

   Ba4Mn3+4(Si4O12)O2(OH)4Cl2[Si2O3(OH)4]

  アルミノ杉石 KNa2(Al,Fe3+)2Li3Si12O30

 

 ここの石は、小玉川鉱山と同じ傾向があるようで、粘板岩の片理中に産出する。黒褐色のノリッシュ雲母は、黒雲母に似てキラキラと光るのでよくわかってなんとか見つかる。が、フェリリーキ閃石やその他というと石が黒っぽいものだらけでよくわからない、不安のままだった。それでも割って少しピンクがかった石も採集してきた。特にスワインフォード石はさっぱりわからなかった。が、叩いて割った石をいくつか持ち帰り、観察した中からいずれもそれらの石がちゃんと見つかった。舟子沢鉱山は南部石の原産地であるけれど、さすがに南部石は見つからなかった。

 

3.採集した石

 以下は、今回採集できた石の写真です。いずれも舟子沢鉱山のものです。

 

A)フェリリーキ閃石ノリッシュ雲母

写真3 フェリリーク閃石とノリッシュ雲母の付いた石

 

写真3a (写真3の一部拡大)

    ノリッシュ雲母(KLiMn3+2(Si4O10)O2)

    黒雲母のようにキラキラと光る箇所

    写真では、黒い所と銀白色に光った箔状の箇所が該当

 

写真3b (写真3の一部拡大)

    フェリリーキ閃石(NaNa2Mg2Fe3+2LiSi8O22(OH)2)

    赤黒い細い繊維状の箇所が該当

 

写真3c (別な石での拡大)

    フェリリーク閃石(NaNa2Mg2Fe3+2LiSi8O22(OH)2)

 

B)スワインフォード石

写真4 スワインフォード石

    (Ca0.2(Li,Al,Mg,Fe)3(Si,Al)4O10(OH,F)2・nH2O)

    石の中央から黄矢印の先辺りにたくさん存在している

 

写真4a (写真4の一部拡大)

     スワインフォード石

     黄土色や黒っぽく、針状に見えるところが該当

 

 スワインフォード石は、アルミノ杉石が変質してできるらしい。粘土鉱物の一種と考えていいようで、非常に柔らかく、引っ掻くと簡単に失くなってしまう。(参考6)

 

 写真の3つ以外の他の石となると、ブラウン鉱はなんとなくわかるが、いくら探しても見つかる感じがしなかった。よく見てもわからないかな、他の角閃石や透閃石などが混在しているのかもしれないので。

 

 最後に疑問が。舟子沢鉱山はマンガン鉱山なのに、リチウム(Li)を含む鉱物が多く見つかっている。なんでここに多いのだろうか。しかもマンガン鉱山なのにマンガンを含まないフェリリーク閃石やアルミノ杉石などの鉱物もいくつか見つかっている。そこが不思議な感じがしている。

 東側に花崗岩のペグマタイト地域があって、その熱変性を受けているとの事のようだが。

 

4.採集後

 採集後は、宿は手配して貰っていて、普代村にある国民宿舎「くろさき荘」に宿泊した。海がよく見える場所にあったが、あいにく天気が悪くて、いい感じの海は見えなかったが。

 夜は、美味しい食事と松原先生が所有の石の頒布会となった。私はいくつかの石を欲しかったが、ひとまず日立鉱山の菫青石を確保できてよかった。

 

参考

1.高橋維一郎、南部松夫,新岩手鉱山誌,東北大学出版会(2003)

2.鈴木保光,鉱物情報,149号,p2-6(2006)

3.鈴木保光,鉱物情報,150号,p6-8(2006)

4.鈴木保光、他3名,鉱物情報,159号,p2-3(2009)

5.鈴木保光,鉱物情報,214号,p7-10(2023)

6.鈴木保光,鉱物情報,216号,p6-7(2023)

7.浜根大輔、他4名,日本鉱物学会年会講演要旨,R1p-10(2022)

8.浜根大輔、他2名,日本鉱物学会年会講演要旨,R1p-10(2023)

9.  鉱物情報,2023観察会配布資料