セラミックコンデンサのサイズは、 | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

今回は鉱物は、セラミックの一種なので、関連の余談です。

 セラミックコンデンサって何だ

 セラミック製コンデンサですが、多くにセラミックのチタン酸バリウム(BaTiO3、通称「チタバリ」) が使われていて、現在セラミックコンデンサの主流です。用途は電荷を溜める働きを持ち、抵抗、コイルなどと一緒に使われ、平滑回路、発信回路、フィルター回路などとして電源や保護などの目的で使われています。(電子回路など概略は参考1や2のサイトなどで)

 

 

積層セラミックチップコンデンサ

 積層チップセラミックコンデンサは、セラミックコンデンサの中でも、現在はスクリーン印刷技術を利用し、印刷、積層、切断、焼成などの技術を使って作製したコンデンサです。以下に積層セラミックコンデンサの外観写真を示します。よりによって比較的小さいほうのチップの写真です。

 

写真1 C0603の積層チップコンデンサ(焼成品)

 この写真では、いったい何を写してんのかいな?!となるかもしれません。私の古いデジカメで手振れ防止機能を働かしてもこれ以上鮮明に撮れません。これを別のカメラで拡大したのが下の写真です。

 

写真2 C0603の積層チップコンデンサ(写真1のチップ)の拡大写真

 

 写真2には30個ほどの積層セラミックチップコンデンサ(通称チップコン)が写っています。C0603という表記は、0.6mmの長さで0.3mm角のチップコンデンサであることを示しています。写真には、1個だけ端子電極しか見えていないチップがあります(中央右寄りに)。電子部品ですから、チップの両側に端子電極としてこの場合Ag-Pd(通称ギンパラ)が焼き付けられています。銀色に光っているところがそうです。

 このようなチップコンは、現在ではスマートフォン1台で400~500個、パソコンで1台で700~800個使われています(参考1)。写真で示したサイズのものも含めてだろうと思いますが。

 

 下の写真3では、10年ほど前に入手した未焼成のC0402のチップコンです。未焼成というのは、チップコンを作るには1000℃~1350℃で焼き固める(焼成する)必要があります(参考3,P103)が、その焼成前のものです。焼成後に端子電極を焼き付けて、製品としています。写真3にはその焼き固める前のもので、8個ほどが断面で、左端の1個だけが横になったままに両面テープ上に貼り付けています。(小さいためピンセットでつまんで並べるのが大変なので)。焼き固めるとセラミックは縮むので、焼成品ではもう少し小さくなっています。チップコンはセラミック製品ですから、陶磁器などの焼き物と同じ理屈で焼き縮みます。

写真3 C0402積層チップコンデンサ(未焼成)の写真


 写真3の断面を見ると中が少し黒くなっていますが、ここが電極で、電極にNiやCuが使われ、電極誘電体であるチタバリが交互に何枚も積層されています(この製品では電極と誘電体が交互に20層ほど)。焼成品の層間は、20年ほど前の参考3のp103には1.9μm(1μmは1mmの1/1000)の写真が掲載されており、現在では0.5μmを切っているのではないかと思います。

 

不良解析の難しさ

 私は昔、この部品であるチップコンの不良解析をしていたことがあります。いずれのチップも非常に小さく、不良品の解析などをしようとする時にはその不良断面を出す必要があり、断面を削るために#3000のヤスリで削るなんてこともできません。やったとしても1回擦る毎に見ては擦り、見ては擦りの恐る恐るの作業を延々と不良個所が出るまでやらなければなりません。これの不良個所はmm単位ではなくて、μm(mmの1/1000)の単位ですから非常に苦労した覚えがあります。時には不良個所を見つけ出すことができず、すべて削ってしまったという失敗も数知れませんでした。ましてハードディスクの読み書きに使われるヘッドでは更に1/1000の単位(nm)のことがあり、いったいどうやってその断面を出したのかと私の想像を超えていました。

 

生活を支える電子部品

 セラミックコンデンサに限らず、セラミック製のチップコイル、チップ抵抗なども多くは同じような技術で作られています。いずれも半導体技術をあまり使えていません。スクリーン印刷を応用した技術によって作られています。なので安価に大量に作ることができて、私たちの生活を支えています。

 また、半導体のような能動部品だけで電子回路を作ることは難しく、セラミック製の抵抗、コイルやコンデンサなどの受動部品も合わせて電気製品はできています。半導体ばかりに目を奪われがちですが、これらの受動部品にも注目してもらいたいと思います。

 

セラミックチップ部品の将来は

 半導体技術は凄くお金がかかります。そのためもあり半導体分野では日本は世界にやや後れを取ってしまいました。現在受動部品では、まだ世界に優位の地位にありますが、韓国、中国のこの分野の発展は著しいものがあります。日本の技術者が大勢引き抜かれたという話を聞きました。この分野も世界の後塵を拝するようになってしまったら、日本の科学技術立国としての生命も終わりに近いと感じます。

 

おまけ

 スマホやパソコンには、チップコンデンサを含めて、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)など希少金属や特性を支える高価な金属が使われています。ディスプレイなどにインジウム(In)が使われてもいますが、日本でのその消費は、10年以上前の記憶ですが、世界の70%以上だったと記憶しています(参考4)。この金属も知らない人が多いと思いますが、電子部品にたくさん使われています。

 そんな事情をよく知り、スマホやパソコンなどを含めた電気製品の回収に是非協力してください。既に閉山した小坂鉱山やイトムカ鉱山を経営する会社などが、現在では金属の回収事業も進めています(参考5)。

 

 今回は、生活の中でよく使われている電化製品の中に、スクリーン印刷技術など身近な技術によっても、非常に小さいものが作られていることを知ってもらいために書きました。

 

 おまけの中のおまけとして、私の経験から。ちなみに0402のチップ1個をピンセットで掴み損ねると、1m四方の平らな、他に何もない白い机の上でも、その1個を見つけるのにかなりの時間がかかります。(1,2分ではなかなか見つけられないです。)

 

参考

1.TDKのセラミックコンデンサの解説

 セラミックコンデンサとは?TDK Techno Magazine

2.村田製作所のコンデンサの解説

 コンデンサとは? | 村田製作所 技術記事 (murata.com)

3.村田製作所編,セラミックコンデンサの基礎と応用,オーム社(2003)

4.独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構のインジウムの動向を示すサイト

 09-16.indd (jogmec.go.jp)

5.金属回収などの事業をする会社のサイト(例です)

 環境・リサイクル DOWAエコシステム(株)| DOWAホールディングス

 野村興産株式会社 | 廃乾電池・廃蛍光灯のリサイクルなどのリサイクル企業