砂金採りの人のための本から、金についてと金関連の思い出 | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

先日、Amazonで本を探していたら、以下の本が目にとまり、で、即購入しました

「あなたの街でも砂金が採れる!?」(参考1)

 

 

 この本が目にとまったのは、パニング皿を買っておいたし、友人が砂金採りに行こうと誘ってきたので、たまに遊ぶのは良いかなと思っていて、よし行こうと思ったが、いざその直前になって誘いには心の準備ができていなかったため砂金採りはお断りをし、実現しなかったことがあったからかな。

 

 でも、youtubeなどで砂金採りの様子を見ている(参考2)のでやってみたいなあなんて思っているし、パニング皿は別なものの採集でも使えると思って用意してある。

 

本は、懇切丁寧に砂金採集について書かれている。

 金の歴史から始まり、

 砂金の豆知識、

 砂金体験場所、

 自然の砂金採り、

 砂金採りでの考え方、

 仲間募集について、などなど

勿論、砂金採りの際のグッズの紹介もある。なかなか面白い。でも、この本はAmazonでしか入手できないのです

 

 話変わって、金の話。

 

 ちなみに、多くの人が持つスマホには、約400g/トンの金、2kg/トンの銀が含有すると言われ(参考8,p122の図3-6-3)、東京オリンピックの金、銀、銅メダルは携帯電話などから回収されて作製されたことはよく知られたことだ。(参考6)

 

 稼働中の金鉱山である菱刈鉱山では、40g/トンを越える品位、平均で20g/トンだそうで。世界に類を見ない高品位の金鉱で、採掘開始から40年にも満たないのに、佐渡金山での金のもう3倍量もの金を採掘してる。年間6~7.5トン程度の生産を行っているようである。(参考7、8)

 

 菱刈鉱山の採掘は、参考9を読むと、温泉が出るようで、湯を抜いてから採掘しているようだ。かなり熱いところでの採掘になっているようだ。昔の鉱山での採掘を見ると狭い坑道で暑苦しかったようだが、菱刈鉱山での採掘は、それとは違い、湯を抜いて重機が入った坑道での採掘となっている。(参考7)が、それでもやっぱり普通よりは熱いのではないかと思う。

 

 本の中で紹介されている北海道十勝の歴舟川(大樹町)での砂金採りの話は、参考4にもよく書かれている。また、そこでの砂金掘り体験は、大樹町のホームページ(参考5)をみてほしい。近くに親族が居るので次に訪ねた機会にでも行ってみようと思っている。

 

 砂金は宝飾品としないようだが、金のナゲットを宝飾品として扱っている店GAIAがある。(参考3)

 

 金利用の歴史、金の科学、金の利用については参考6に。金は宝飾品として使われるだけでなく、近年は電子部品に多く使われている。スマホからの金の回収を始め、レアメタルを含めて現在ではで電子機器の回収は都市鉱山と言われているほどだ。金のナノ粒子の利用は、生体物質の検出、塗料、触媒等に適用されてきている。会社では、ナノ粒子の金をガラス中に分散して作る光波長変換素子の研究等を目にしてきた。

 

----- ここからは、私の金に関連する余談、与太話です。----------

1.

 学生時代の実験で金コロイドを作製したことがある。金を含む溶液が入った試験管をバーナーで炙って、金コロイドを作るだけであるが作製すると血の色のような金コロイドができた。その赤さにびっくりした。他の人はあまりうまくいかなかったので、よく覚えている。

 

 ちなみに、金の色は粒子のサイズによって変わる。(参考8,p130の図3-8-3)15nmほどでは赤紫,25nmほどでは青紫、40nmほどでは青。これは、光の電場による自由電子の振動に基づく光吸収によるもので表面プラズモン共鳴で説明されている。金では、530nm付近(緑色)の光が吸収されて、その補色の赤紫に、銀では、420nm付近(青紫)の光が吸収されて、その補色の黄色に見える。

 

2.

 金と言えば、私は最初に会社に勤めた頃、金関連の仕事をした。金メッキの仕事だ。セラミック関連の製造で金メッキを担当したので、金の仕事の難しさ(?)を経験している。金メッキ中に不良となった製品を回収することも金を扱うなら大事な仕事になる。何せ金は高いから、ちょっとした作業でも回収できると大きな金額になる。

 

例えば、

金メッキの場合、金メッキされた製品を、シャワーを掛けてその水を容器貯める。その後に水洗作業に回す、シャワーのこの一手間を入れるだけで、部長クラスの人の月給に当たる金の回収ができたなあ。当時、金換算で工場全体で年間最大32kgを扱っていたからなあ。

 

3.

 金回収のことでは、ある製品では、金メッキ後に研磨して研削する工程があった。

その製品を担当する事業部の責任者に「研削かすの中に金があるはずだろう」と何度も聞かれたが、「当然あるはずですよ」と私は答えていた。誰でも思うでしょ、金メッキした物を削れば、研磨カスに金が含まれるって。

 

 で、ある時、その研磨研削装置が私の仕事場の隅に1台設置され、1年ほど稼働し下請けに移されていった。残ったのは薄茶色の泥状の研磨かすと研磨の際に使った水が貯まった100Lほどの容器。仕事をする上で邪魔なので、その容器を片付けることにし、

容器に水を流し入れながら、その泥水を何回も攪拌して、浮いた白い粉を流して捨てるようにした。残った薄茶色の粉を潰してみると金色に輝いた。その作業で、なんと700万円も回収できた。当時の金の値段計算からは、約2kgの金が回収できたのでした。

 

 担当の事業部責任者、それを知って慌てました。下請けでは、その泥と水は田圃に捨てていたというので、その泥の回収に田圃に走ったのは言うまでもありません。懐かしい思い出。

 

4.

 ちなみに、大樹町には私の親族が以前住んでいました。隣の村のナウマン象が出土したことで知られる忠類村には今も住んでいます。町村合併で忠類村は幕別町になりましたが。

 

5.

 金メッキの金の補充には、シアン化金カリウムを使っていました。シアン化金は、あまり水に溶けないので、シアン化カリウム(青酸カリのこと)と反応させたシアン化金カリウムは水によく溶けるので。ちなみにシアン化金カリウムも猛毒です。シアン化物もいずれも猛毒です。

 

 当時働いていた会社では、金は高価なので、シアン化金カリウムは経理課を通して入手、使用していました。

 

 ある時、私が忙しかったので、女性アシスタントに経理に行ってシアン化金カリウムを受け取ってくるように頼みました。戻ってくるのが遅いので、どうしたのかと経理に行ってみることに。行く途中で工場内の道端に、なんとシアン化金カリウム4kgが置いてあるではありませんか。アシスタントは、それを道端に置いて、ついでに別工場での仕事をしていたのにはビックリ。受け取ったらすぐ帰ってくるように注意もしていたのに。

 

 見つけた時は、驚きや恐ろしさで腰が抜けてしばらく立てなかった状態でした。シアン化金カリウム、それだけで1600万円分で高価。しかも猛毒で何万人と殺せる量で。

少し経ってから、最初に見つけたのが私でよかったと胸をなで下ろしたのも言うまでもありません。

 

6.

 金箔を入れたものを販売していたので購入したことがある。もう10年以上前なのでどこで購入したか正確に覚えていない。しかし、山形県内のサービスエリアで、たぶん山形道の寒河江SAでなかったかと思う。ラベルをよく見ると食品添加物の表示がある。以下がそれ。小さい方で当時500円、大きい方が700円でなかったかと思う。

 

7.

 金メッキの仕事で。ある時工場内の寮で寝ていた朝方、現場の人が部屋のドアを激しく叩きました。金メッキ液200Lが漏れ出したとのこと。(ちなみに金メッキ液には金が約8g/L含まれてました。200L×8g/L×4000円/g(当時の金の値段)=640万円です。)

 

 大事件なので慌ててベッドから飛び起き、現場に行き、排水路の流れを止め、排水路の水を泥と一緒に全て回収しました。1000Lのバケツ、20以上。それでも金メッキの排水は、排水処理の能力を超えて流れていき、処理水はいったん工場内の池に貯めて、随時チェックされて流されていたのですが、池で飼っていた鯉は全て死んで浮いていました。工場から地域の川にメッキ液が流れ出たのは間違いありません。始末書ものの事件でした。

 

 そのおまけとしての話。留めて貯めた排水液は、業者に「ただ」で回収、処理してもらいました。含有する金の金額と処理費用が相殺されて、「ただ」だったという結末でした。ただで金をあげたようなものなので、大きな損失を出してしまって...。

 

----- ここまで与太話 -----

 長々と失礼しました。

 

 で、金1kgを持ったことがある人は少ないはず。金の回収で2kgほどを回収したと話しました。金2kgと言うと凄い重さですが、体積で言うと100mLちょいです。小っさあ!

 

 (10kgと言うと凄く重いですが、体積では500mLほどですよ、金って。)500mLのペットボトルを想像してみてください。飲料水入りの500mLのペットボトル(約0.5kg)を片手で持つのは簡単ですが、500cm3(約10kg)の金を片手で持つのは、かなり大変なことがわかるでしょう。

 

参考

1.伊藤亮太,あなたの街でも砂金が採れる!?~令和時代の砂金採り入門~,ファストブック(2020) 「あなたの街でも砂金が採れる!?」

  この本はamazonでしか売っていません。

2.例えば以下のものです。

 a.一級河川で砂金採り、一攫千金!ピリカ自然塾

 b.多摩川源流に眠る砂金を捜す! - YouTube

 c.砂金の採り方 - YouTube

3.金nuggetを宝飾品として扱っている店

 GAIA

4.碑めぐり,大樹町開拓叢書 第二輯、大樹町(2002)

 この資料は、昭和48年から「広報たいき」に掲載されものをまとめた物です。

 資料中の「砂金史考」「宝川物語」が砂金関連の話題になっています。

5.大樹町での砂金掘り体験は以下のところで。

 砂金掘り体験 | 北海道大樹町公式ホームページ (town.taiki.hokkaido.jp)

6.東京オリンピックのメダルについては例えば以下のところで。

 都市鉱山からの回収で作製したメダル

7.菱刈鉱山についてのサイト

 住友金属鉱山(株)の菱刈鉱山

8.国立博物館、毎日新聞社編、金GOLD 黄金の国ジパング、国立博物館,毎日新聞社,NHKプロモーション(2008)

9.中村健一、他2名,日本鉱業会誌,v103,p216-222(1987)