AI小説:
元勇者で魔養殖屋の事件ログ
魔導技術の向上により、魔物養殖は国の重要な産業として発展してきた。
特に経験値の高い魔物は養殖が難しいとされてきたが、現在では安価とは言えないが中級クラスと戦士たちは購入が可能なレベルまで、企業努力が出来てきた。
魔物を倒せば経験値が入る。安全で確実なレベルアップ方法として現在では重宝されている。
使い道は他に、移植手術にまで応用され、失った四肢の修復や皮膚の修復、軟骨の修復など幅広く応用されている。
ただ移植後の大量の経験値獲得は魔物の意志が目覚める危険が高いらしく、基本的に一般のお金持ちに適用され、戦士は機械化する事が多かった。
僕は、養殖場のオーナーだ。元勇者。しかし、魔王討伐を断念。それからレベルアップのノウハウを活かし、富と安定を選んだのだった。
「勇者様! ご報告申し上げます」
執事のバスチヤンが、僕の寝室に飛び込んできた。
「なんだよ。まだ寝てるんだぞ!」
ベッドから身を起こす。
「失礼しました。ですが、緊急事態でございます」
「まて、僕は勇者じゃない今は養殖場のオーナーだ。あと、敬語もやめろ」
「わかったよ……」
彼は、執事であり幼馴染みでもある。そして、僕と同じく元勇者だった。
「で? どうした?」
「ああ、そうだった。昨日、例の牧場で事件があったらしいぜ」
まさか、それは昨日予告があった鳳来貝養殖場『ザッカルタ』なのか?あそこは主に鳳来貝で上質の真珠を生産する牧場だった。僕は、聞き返した。
「昨日予告があった、ザッカルタの事か?」
「そうだぜ、なんでも養殖の魔物がが全て殺されたってさ」
「なんだと!!」
「牧場には、その家族以外に誰もいなかったらしいけどね。でも、犯人はまだ捕まってないらしいぜ」
「ふむ……」
牧場の従業員たちが居なかったと言うことか。あそこは住み込みで働いている従業員も多かったはずだが。
「じゃあ、誰も犯人の顔を見ていないのか?」
「ああ、目撃者は居ないらしい」
「そうか……
とりあえず、僕はこれから出かける。留守番頼めるか?」
「ああ、いいぜ」
「それと、今日の夜は仕事があるから夕方には戻る。それまで頼む」
「わかったよ。気をつけていってくれよ」
「ああ」
僕は急いで支度をした。地下にあるエクスカリバーを持ち出そうかとも考えたが、そこまでする必要もないだろう。
エクスカリバーとは、
魔王討伐に使った聖剣。聖なる力も魔力もどちらも蓄積することができる。確か今は半分ほど力がたまっているはずだ。だが、これも納品用の経験値。使うほどではないと判断し牧場に向かった。
***
牧場に到着すると、入り口付近で従業員達が右往左往していた。
「おお、コームルさん! 丁度良いところに!」
「ん?」
「実は、大変なことがおきまして……」
従業員の一人が慌てた様子で話しかけてきた。あまり見たことのない屈強な若者だった。
「落ち着いてください。何が起きたんですか?」
「はい、実は先程、牧場主の家族が遺体となって発見されました。しかも、遺体は全て切り刻まれておりました」
「えっ!?」
なんということだ。
「それで、牧場主である息子さんの姿が見えません」
オーナーゼフの息子はわずか5歳で心臓の病気を患っていた。つい先日、魔導移植手術により成功したはずだ。
「ちなみに息子さんの最近の容態はどうだったのですか?」
「移植後は健康そのものです、昨日も元気に遊んでおりました。ですが、姿が見えないのですよ」
「誘拐された可能性もあるということですね?」
「はい。それにしても、一体誰がこんな事を……」
「とりあえず、オーナーゼフの所に案内してもらえませんか」
そう言って入り口まで案内してもらった。
巨人が通るような巨大な扉。表には白く輝く波のような装飾が施されていた。
その波はちょうど人の高さほどのところで大きくうねり、取っ手の様になっていた。
青年はそれを引いたがビクともしない。
「あっ、あれ?誰かが鍵をかけたのかな?」
そう言ってがちゃがちゃとしていると、装飾の取っ手をパキンと折ってしまった。
こいつ、なんつーバカ力だ。
「あー、すみませんー」
いや、僕に誤っても仕方ないだろう。
青年が僕に頭を下げると、逆に出っ張ったお尻で扉を押すと、扉があいた。
「あっ、押すんだったのですね」
青年は恥ずかしそうに扉をあけて僕を案内する。
オーナーゼフの家は城の様に広い、玄関を抜けるとすぐ大きなホールになっている。
しばらく廊下を歩きながら、僕はバスチヤンにいやな予感がする事と、念のために指示を出していた。
廊下の突き当たりにある扉を開けると、そこには巨大な水槽があり大量の海水魚が泳いでいた。見下ろしてなかをのぞき込むと、そこには白く輝く波様にうねる殻でラグビーボールほどの大きさの貝が所々に壁に張り付いていて、幾つかは体が陸に半分でているものもいた。
海中に戻そうと足で軽く押してみるがビクともしなかった。
「あっ、邪魔ですよね申し訳ございません」
そういって彼は両手を添えてぐっと貝を押して海中に戻した。
「ここが、鳳来貝殻養殖場です。鳳来貝はここで養殖しております」
「なるほど……」
すると、奥の方から声が聞こえてきた。
「どうしよう、どうしよう」
そこには少女が一人膝を抱えてしゃがみ込んでいた。
「君は?」
「あ、私はゼフ様の娘です。娘と言っても血は繋がっていないですが……」
「ここで何を?」
血がつながって居ない娘とは言え、こんな所で何をしているのだろう?
「私は鳳来貝殻に歌を聴かせる役目があるのです、どうやら私の歌に鳳来貝殻は嫌がるのだとか。水中では歌の威力は届かないらしく、水の中でじっとしているのです」
成る程、歌の檻と言うわけか。
「ただ、鳳来貝殻は歌を聴かせすぎると、慣れてくるのです、オーナーゼフにも歌の能力があり、交代で当番をやっていたのですが、、、」
「もう効力がなくなり、陸に出てきているのか」
「はい、そうなのです。養殖場にいても魔物は魔物歌で抑えなければ凶暴になっていきます」
「オーナーゼフはまだ来ていないし、、、」
彼女はオーナーゼフが死亡したの知らないらしい。
「うーん……」
その時、外から物音がした。僕は、窓から飛び出すとそこには広大な草原があり、魔物たちが大量に倒れていた。
よく見ると、魔物たち全て干からびてて死亡している。
経験値を養殖タグにて吸収された跡だ。魔導具の養殖タグは魔物を戦士に売った後、戦士に管理され発動すると経験値として買い手の戦士に吸収される。
しかし、この量は、、、オーナーのタグキーの発動だろう。
オーナータグキーは全てのタグを発動させることも可能なスペアキーとなっている。
「助けてくれー!」
声の方をみると、ゴーレムに襲われそうな従業員が助けを求めていた。
不良品のタグがあったのだろう。
僕は、一足飛びにゴーレムとの距離を詰め、ゴーレムの真下に潜り込み、一気にゴーレムの顎を蹴り上げた。
ゴーレムの頭部は簡単に粉砕した。勇者の名前は伊達じゃない。
経験値が少したまる。しかし、レベルマックスに近い勇者の器だからこそだ普通なら相当な経験値だ。
しかし、、、養殖魔物たちを見回す。この量を吸収しているとなると、犯人はかなりレベルアップし目立つはずだが。
青年があとから駆けつけてきた。
しかし、オーナーゼフの息子の名前は何だったか。確か、、、
「なぁ、イゼロ。質問なんだが」
「はい、何でしょう?」
青年は答える。
「なぜお前は父親や家族を殺したんだ?」
5歳になる息子の名はイゼロだった。
「えっ?」
青年は呆気に取られた顔になる。
「えっ?じゃねーよ!今何でしょうと言ったよな? お前とぼける気か?」
「い、いえ、ちょっと聞いてなかっただけですよ、そもそも、そうではなく、、何故私がオーナーゼフの息子さ、、、
ドンッ!地響きがなる。
彼が地面を蹴る音だ。
油断した、、、
彼の姿が不意に消えたかと思うと、目の前に拳が迫ってきていた。
それを間一髪で避ける。
「ほう、今のを避けるとは流石ですね。私の必殺の一撃でしたが」
「くっ」
こいつは敵だ。
僕は腰の短刀を抜き構えた。
「おっと、動かない方が良いですよ」
イゼロはよけきった僕の後ろにいるゼフの娘を人質にとっていた。
だが、時間稼ぎは終わり。既に秘密兵器は到着している。
「分かった、僕は動かないから、お前もそのまま突っ立っとけ、、、」
何を余裕ぶってるんだと言わんばかりのイゼロだったが次の瞬間、背後から何者かに殴られて気絶する。
「全く、こんな雑魚に苦戦するなんて情けないわねぇ」
そこにいたのは、かつて勇者として討伐に挑んだ相手。大魔王アイシアだった。
てっきり、バスチヤンが攻撃すると思って気を引いていたのに。
「おいおい、なんでここにいるんだよ」
僕は、そう言いつつも何となく想像はついていた。
アイシアは呆れたという感じで
「あなたが、私への今期の納品用の経験値を使用するかも、ってバスチヤンから連絡が入ったのよ」
「全くあのポンコツ勇者め……」
「それで、あなたの気配を感じて来てみたら案の定って訳」
「そいつは助かったぜ」
そして、アイシア僕の肩に手を置く。
「さて、約束通りお礼を貰おうかしら?」
全く、勝手にきて見返りを求めるとは、強盗みたいな奴だ。
「おい!バスチヤン!もういるんだろ!」
だから僕は、イゼロに勝負を掛けたのだ。
「はっ!私も例のものもここに!」
目の前に跪くバスチヤン。
「うるさいわ!」
僕は思いっきりバスチヤンの頭頂部にグーパンチを振り下ろした。
「痛!こら!ちょっとは感謝しろよ!大体、数百万の養殖魔物の経験値獲得したら5歳児でも上級戦士だぞ!エクスカリバー使ってたら、今期アイシアさんへの納品の経験値がどうなっていたことか!」
そう、玄関の装飾品の鳳来貝殻をぶち壊したのを見たとき、面倒な事になると感じたのだ。
バスチヤンに戦いになるかもしれないのでエクスカリバーを持ってくるよう依頼した。するとヤツはついでに魔王アイシアにも連絡を入れたらしい。
「いい加減にしなさいよ!」
また、バスチヤンが殴られる。
「まったく、これだから低脳な人間は困る。まあ良い、お前はもう用済み!とにかく!この私が出てきたのだから、この場で今期の経験値をいただきましょうか!」
「何言ってんだ勝手に来て!だいたい今期の納品分の経験値は溜まってねぇよ!」
僕は答える
「ここにあるじゃん」
アイシアはイゼロを指差す。なるほどねぇ、、、
***
アイシアは満足そうに口を拭いた。経験値は口から接種するわけではないが、、、
足下には経験値が空っぽの聖剣と、5歳児の姿のイゼロが眠っていた。
多分青年になっていた記憶は無いだろう。アイシアはイゼロを見下ろした。
「全く、このガキが経験値吸収してるとは思わなかったわ」
「ああ、僕もだ。養殖魔物の経験値吸収はオーナーゼフが死んでるから、誰かが持っているとは思ったが」
「それにしても、なんでこんなガキが?」
「多分事故だったと思う。あくまでも憶測だけど」と言い話を続けた。
「オーナーゼフが出した予告『明日驚きのニュースがあるので朝からザッカルタに集まってほしい!』って内容だった。多分養殖魔物を全部吸収して、戦士として冒険に出る予定だったんじゃないかな」
「そして、何かの事故でオーナータグをイゼロが発動してしまったと?」
「うん、そしてイゼロが青年になった。ただ、運の悪いことに移植された魔族の心臓が経験値によって暴走し混乱。近くにいたオーナー夫妻を殺してしまった。魔族は経験値と経験知を吸収出来るんだろ?」
「そうね、対象から知識も得ることが出来る」
「そして、知識を得て冷静になり、イゼロは逃げようと玄関から出ると、僕に会ってしまったと、そう言うことだ。」
「ふーん、そうなんだ。まぁ私には全く関係ないけど」
「そうだな、とりあえずここの片付けを急ぐよ。さっさとしないと魔物が凶暴化する」
「じゃあ、私は帰るわよ」
「ああ、じゃ毎度あり」
そう、僕は魔王討伐を辞め富と安定を手に入れたのだ。戦士に経験値を売り、それに比例するように魔王にも経験値を売る。そうして世界のバランスが保たれるのだ。
「いつもの代金は多めにしとくわ、久々に外にでる理由ができて良かったし」
お互いwinwinだ。
「面白い拾いものも貰ったし」
そう言ってまだ気絶しているイゼロを、アイシアは片手で持ち上げ、空に飛びたつ。悪魔だが、見た目は完全に女の子。天使のような悪魔ような羽はない。
ロケット花火のように放物線を書いて、衝撃波をニ、三回撒き散らしたがら東の空へ消えていく。
大丈夫かな、、、イゼロ君、、、僕は、そう思いながら、魔導管理局の到着を待った。大まかな一連の状況を説明するため。
イゼロ君は行方不明ということにしておこう。
***
翌朝、目を覚ますと隣に美少女が寝ていた。
「うわ!」
僕は慌てて飛び起きる。
「おはようございます。勇者様」
少女は笑顔で挨拶する。
「ゼフの娘、そして、今は養殖場ザッカルタのオーナーのイズムです♪
特殊能力は魔物の歌唱強制支配♪一度発動すれば私の意思次第では歌の余韻で何年でも支配する事が可能です♪
ゼフのような中途半端な能力と違って♪」
彼女は天使のように微笑む。
「それでは失礼しますね♪昨夜の行為のお代はビジネスで埋め合わせ頂ければ問題ありません♪」
そう言い残し部屋から出ていった。
「えっ、僕何かした?!
ちょっと!ねぇ!ちょっと!」
僕の叫び声は虚しく部屋に響くだけだった。
