母の部屋はドアを開けると正面に大きな窓があって

右側にはベッド

左には低めのチェストが二つ並んで窓に近いほうにはTVがある

ベッドの手前は洗面台とその隣はトイレ

そしてベッドの少し上にエアコンがついている

 

母はわたしに

「タケダさんに、挨拶は?」という

「いつもお世話になっているんだから、よおくお礼を言ってね

タケダさん、娘が来てくれましたよ」

と母は、エアコンを見上げる

タケダさんは、エアコンの中に住んでいて

いつも母の話し相手をしてくれたり、介護士さんや看護婦さんに言いにくいことがあると、

代わりに言ってくれたりするのだそうで

でも、タケダさんは照れ屋なので、私に会うのが恥ずかしくて、

母のベッドの中に隠れてしまったようである

 

介護士さんたちは、

「あ、タケダさんね…、優しいひとみたいね」などと皆さまご存じ

それで私も、

タケダさんも、この桜餅召し上がるかな?と母に聞くと

母は

「タケダさんは、甘いものはお好きじゃないのよ」

などと言う

 

母は二年前に亡くなった

 

母は相場が長く

私は最初は父が株式投資をしていて

(実家には父が書いた方眼紙を何枚も貼り合わせたチャートがとってあった)

母は証券会社にお使いに行っていただけと言っていたのだが

叔母は、何言ってるの、お母さんよ、あなたのお母さんが熱心だったのよ、と。

ふーむ

母は、介護付き施設に入居して、しばらくしてから認知症と言われてからも、

新聞は毎日ていねいに読み

ブリヂストンと西松と、重工を買うから〇〇証券の〇〇さんに電話して」

とか言った

〇〇さんは、いつも柔らかい色のスーツを着てとてもお洒落な女性

 

しばらくするとまた母は、

「タケダさんと相談して、

西松や地所や何かを売ることにしたから、〇〇さんに電話しなくちゃ」などと言う

 

そうやって

母は700万の利益をだした

母の得意の銘柄がいくつかあって、母銘柄を私もよく売買してます

そして

介護施設が月に25万と後もろもろなので、

「二年間分ちょっと儲けたね、あんたにも少しお小遣い上げるから」

などと言った

計算も確かだ

認知症というのは

ドクターの見立て違いではあるまいかとも思ったものだった

パニック症候群からうつ病になったので

(大きな病気の後の不安が原因かと思う)

私と妹は母の成年後見人の手続きをしていたが

出番はなかった

 

昨夜、アマゾンプライムで高橋一生の九月の恋に出会うまでというのを仕事をしながらぼんやりと観た

そしたら

エアコン通風孔から、一年後の高橋一生の声が聞こえたというところから、

 

 

え?とジーっと観た

エアコン?

そうか

エアコンというのは異次元への扉ともなるキーワードだったのかも?

もしかしたら

本当にタケダさんはいたのかもしれない

それなら、申し訳ないことをした

世界は不思議に満ちていると常に思っているはずであったのに

/(^o^)\ナンテコッタイ

 

タケダさんは

株式相場に深い造詣がある方らしいので

うちにも来てくれないかな?

と、エアコンの表面をササっと拭いて、いついらしてもよろしいように

準備万端であります☆~?

謎だ!