極右”が普通になっていく西欧の今後 2024/06/14 | プルサンの部屋(経済・世界情勢・株・通貨などを語るブログ)

極右”が普通になっていく西欧でフランスの28歳の極右党首
それに対しての支持率急降下のマクロン大統領の“賭け”はおそらくないだろう。

5年に一度の欧州議会選挙が行われ、予想されていた通り極右政党の躍進が目を引いた。

とはいえ現職のフォンデアライエン委員長(左派リベラル派の国連とグルしている)を支持する政党の集まりが過半数を維持できる見通しでEUがすぐに何らかの方針を変更することはないが、ドイツの極右派AfD党が躍進しており今後見放せない。

フランスではマクロン大統領の政党が極右政党に大敗した。
歴史的だ。

しかも圧勝した極右政党の党首は“極右アイドル”と呼ばれ熱狂的な支持を集める28歳の若者だった・・・。

「権力を握ったことのない唯一の政党は“極右”」
欧州議会選挙(全720議席)はEU加盟国に、人口に則し割り当てられた議席数をそれぞれの国で選挙する。

ドイツに次ぐ議席数を持つフランスでは、マクロン大統領率いる与党連合の得票率が極右と言われる『国民連合』の半分にも満たなかった。
国民連合は高らかに勝利宣言し、次期国内総選挙への意欲を述べた。

『国民連合』マリーヌ・ルペン前党首
「次の総選挙で国民の信任が得られれば権力を行使する用意がある。
はっきり言おう!我々は国を再建しフランスを蘇らせる用意がある」

『国民連合』を実質率いるのは大統領選でマクロン氏と戦ったマリーヌ・ルペン氏だが、現在の党首はジョルダン・バンデラ氏28歳だ。

バンデラ氏はSNSを駆使して若い世代の支持を集め、TikTokのフォロワー数は140万越えという、まさに“極右アイドル”だ。

SNSでは気さくでフレンドリーな動画をアップする颯爽とした背の高いイケメン…。だが、集会での演説では、極右らしさ全開だった。

『国民連合』ジョルダン・バンデラ党首
「フランスの消滅は既に様々な地域で始まっている…(中略)国家の安全の脅威となる外国人の軽犯罪者・重犯罪者・イスラム主義者を国外退去させる。(中略)マクロンのヨーロッパに対抗しよう。一切譲歩してはいけない。フラン人であれ、これからも永遠に…」

移民排除、イスラム排除、自国ファーストを訴える熱弁に若者中心の支持者たちは国旗を振って歓声をあげていた。

この熱狂は何なのか?
極右を研究する専門家に聞いた。

国際関係戦略研究所 ジャンイブ・カミュ氏
「バンデラ氏の人気は非常に高い。彼がまだ28歳で、フランスの政治の基準からするととても若いという事実が関係してる。調査では18~24歳の支持率が29%だった。若者は自分の将来についてかなり心配している。2年前に年金改革があり、若者は67歳か68歳まで働くことが必要になった。
68歳まで働いてキャリアの終わりに受け取る年金はそれほど多くない。
彼らは何か他のことを試したいのだ。共産主義も普通の選択肢だが、権力を握ったことのない唯一の政党は“極右”だ。それで試してみよう。もし上手くいかなければ私たちは行動を起こして変化するという考え方になる」

“極右が常態になった”
去年12月のフランスの世論調査では“国民連合は危険ではない”と答えた人(51%)が“危険である”と答えた人(30%)を上回った。

日本で極右と言えば、極端な愛国主義、国粋主義、ファシズムのイメージだが、フランスではそれが危険ではないと思う人が主流になりつつあるようだ。
日本に左派が多い背景は、在日朝鮮人に乗っ取られている日本政府だという理由だ。

ふだんからマクロン氏の宿敵として描かれるマリーヌ・ル・ペン氏は9日、自らの極右政党「国民連合」には政権を担う用意があると宣言した。



フランスでは、大統領が最大の権力をもつ。
その大統領と首相の所属政党が別々だというのは、これまでもあったことだ。

しかし、新首相が極右政党から出るとなれば、フランス初の出来事だ。

ル・ペン氏は近年、政治運動の幅を広げて人々を引きつけ、同時に過激主義者のイメージを和らげようと、かなりの努力をしてきた。

同氏とその支持者らは、今回のEUレベルでの大勝利(「国民連合」がマクロン氏の中道政党「再生」の2倍以上の票を獲得)を、フランス総選挙での大躍進につなげたい考えだ。

そうして成功すればいずれ自分自身か、あるいは自分の「教え子」で人気と才能を兼ね備えたジョルダン・バルデラ党首(28)が、大統領の座へ大きく近づく――。

話を今回の欧州議会選に戻せば、EUの多くの地域で、極右とナショナリスト右派が躍進した。
背景には、移民問題やインフレ、環境重視の改革のコストなどに懸念を募らせる有権者の存在がある。


しかし、そうした右派政党が今後のEU政策に、どれだけ実質的な影響を与えられるのかは不透明だ。

EUにおける法律を審議し、修正し、議決する欧州議会の過半数議席は、依然として中道政党が占める。

EUの政策に影響を与えるには、極右はEU全域で団結し、影響力を強める必要がある。

だがそれは簡単なことではない。
極右は国ごとに優先事項が違う。
ロシアと戦うウクライナをどこまで支援するかといった、根深い違いも抱えている。

すべてのEU市民の暮らしに関わる問題で、極右がすでに影響を及ぼしているものに「環境改革」がある。
気候変動対策で世界のリーダーを長年目指しているEUにとって、数兆ユーロ規模の優先課題だ。

ところが今回の欧州議会選で、環境政策に力を入れる「緑の党」は議席を一気に20も失った。

EUの新しい環境規則は、新型の住宅暖房システムや汚染物質の排出が少ない自動車の購入を求める内容になっている。
生活費の上昇に苦しむEUの納税者は、これに不安感を募らせ、抵抗さえしている。

EU各地の農家は、環境規則を不公平で、自分たちの生活を破壊するものだと批判し、大規模な抗議行動を展開している。
今でも西欧の各地で農家デモが大規模で行動している。
カナダの極右派の市民が急増しているコンボイ(超大型トラック)抵抗運動もその一つ。


極右はこうした不満を目に見える形で利用し、自分たちを国民の代弁者と位置づけ、EUや各国政府の「遠く離れたエリートたち」に立ち向かっているとアピールした。

その結果、欧州議会選が目前という差し迫った状況で、農薬規制を含む多くのEU環境規制が薄められたり撤回されたりした。こうした「グリーン目標」が弱められたことは、今後の展開を暗示しているかもしれない。

最後にもう一点、考えたい。ナショナリスト右派が今後EUでどんな力を発揮するのか、あるいは発揮しないのか、確かな予測をしようとする場合、レッテル貼りはあまり役に立たないことが多い。

一部の極右ナショナリストは、より多くの有権者を引きつけようと主流派に接近している。

一方で、中道右派の政治家がどうにか支持者をつなぎとめようと、移民や環境など、有権者の感情に訴えるテーマにおいて、極右の言葉を次々とまねるようになっている。

今回の欧州議会選を全体として概観すると、最多の議席を獲得したのは中道右派だった。
積み増した議席も、中道右派が最も多かった。

ただ、メディアでそうした見出しはあまり見かけないかもしれない。
極右の台頭に関する議論に比べると、中道右派の勝利を話題にしても、あまり人目を引かないからだ。