夫はずっと、少なくとも私の前では泣き言を言ったり、不安をはっきりと口にした事はなかった。しかし、死が避けられない事を覚悟した9月末、夫婦で最後の大事な話し合いをした時に、「自分がこの後どうなるか分からない」という表現を使った。その声音や話し方から、やはり怖いんだと思ったが、その不安を解消できる言葉が見つからない。天国に行けるに決まってるじゃん、善人なんだから、と涙声で応じるのが精一杯だった。
緩和病棟に移動した後、つまり、栄養点滴を外されてから、夫は何も食べない、水さえ殆ど飲めない状態で6日も生きた。「もう今晩かもしれない」と言われてから、私も5日泊まり込んだ。そんな状態なのに、全然脈が弱まらず、看護師さんから夫の心臓の強さを感心された。生きたいんだ、死にたくないんだ、と感じずにはいられなかった。