公演から戻るあなたをホテルの部屋で待っている。
The Lastを歌い終え、ステージからあなたの姿が見えなくなると、私はホテルへ一足先に戻る。
公演を終えた後は、ステージを作り上げた人たちとの時間。
ツアー準備をしている時、バックコーラスで参加しないかと誘いをもらった。
一緒に歌うことが出来ることは、私達の夢だし、とても魅力的なこと。
けれど、今私はそのステージを一緒にしてはいない。
独り占めが怖くて。
一緒に暮らし始めて、約束の約束をして、そして指輪を交換して。
それでも、あなたを独り占めしていることに後ろめたさを感じることがあった。
そんな私に、あなたはいつも独り占めしていいんだよって、そう言って寄り添ってくれる。
今ここにいるのは、あなたの夫であるミン・ユンギなんだからと。
それは、確かにそう、あなたの言う通り。
でも、全てのあなたを独り占めすることに怯えてた。
ホテルの部屋のソファに座り、瞳を閉じ、ツアーが始まってからの事を思い返す。
北米公演、HalseyやMaxがゲストとして一緒にパフォーマンスをし、あなたとの仲睦まじい姿を、微笑ましく見守った。
ツアー期間、ステージだけではなく、ヨントンやMovie Nightで、ファンの人と交流するあなたは、とても嬉しそうで楽しそうで。
ジャカルタは体調が芳しくなくて、とても辛そうだった。それでも、観に来てくれたファンのために、どんなことがあってもやり切るあなたの姿に、心打たれた。
日本公演初日。台風で体力を消耗し、それでなくても控えめな日本のファンたちを、どうにかしてもっと体全部で楽しんで欲しいと、どうしたらいいのだろうと、悩んで眠れないあなたに寄り添った。
2日目、3日目の日本公演、親指を立てる仕草を繰り返し、ファンたちの揃った合唱に、この上ない甘い笑顔を振りまくあなた。
そして、今日までのバンコク3日間。ミン・ユンギコールだけではなく、メンバー全員の名を呼ぶコールに嬉しそうにしていた。
これまでの10年に想いを馳せ、メンバーの分まで感謝を伝えると、普段見せることのない涙を頬に伝えていた。
公演を重ねるあなたを見守るうち、私の想いが浅はかなことに気付かされた。
ステージに立つあなたはSUGAでAgust Dで、私が独り占めできるはずがない。
部屋の扉が開く音がして、私は思わず駆け寄り、あなたの胸に飛び込むと、しっかりとあなたは腕の中に私を包み込んでくれる。
「お帰りなさい。」
「ただいま、ソルフェ。どうかした?」
「お帰りなさい、ユンギ。」
「うん、ただいま。」
「お帰りなさい…」
ただ、お帰りなさいとしか言えない私の気持ちをあなたは汲み取り、私の髪を優しく撫でると、力を強めたのにその腕は優しく温もりで満たしてくれる。
「独り占めしていいんだよ。今、ここにいるのはあなたの夫ミン・ユンギなんだから。」
「ええ。そうね、もう遠慮はしないわ。」
「そう、それでいい。」
まだ全て終わってはいない。けれど、ソロのアーティストとしても、ツアーの成功を収めるに違いない。
力強いパフォーマンスと堪らなく甘い笑顔で魅了するアーティストのあなたを、誰もがそれぞれに独り占めする。
そう、それぞれに…