重い視力障害を有する被控訴人一郎にとっても、近時においては、〔1〕障害者基本法 、〔2〕身体障害者福祉法、〔3〕障害者自立支援法、〔4〕障害者の雇用の促進等に関する法律、〔5〕高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、〔6〕特別児童扶養手当、〔7〕障害年金、など様々な法律・制度の下に、生活環境の整備や支援制度等を通じ、今後、自立に向けた教育や行政、社会、そして家族の支援を受けていくことが期待されるのである。その意味では、いわゆる植物状態 の患者とは異なり、近親者等の介護を受けなければ終生日常生活を送ることに支障が生ずるとまでは認められず、日常生活の基本的な動作自体は、自らこなしていくことができると考えられるというべきである。

そうだとすれば、被控訴人一郎が主張するように終生一日当たり一万円の介護費用の支出を現実に必要とするとは到底考えられない。
 もちろん、両眼失明という障害を負ってこれから生活していく以上、両親や身近な者の相当の支援は必要であると考えられる。しかし、そうした支援を必要とする状態は、前記のとおりの逸失利益と慰謝料 を認めることによって評価できる範囲内の問題と考えるのが相当であり、これを超える損害や支出が現実に生じ、又は将来実際に生ずる見込みがあるとは、認めるに足りない。

飲酒運転 逮捕