初めてのお泊まり旅行。


わたしも彼もテンションが高かった。


車の中で誰にも邪魔されず2人で過ごす時間。


もはや私たちは恋人を超えて夫婦のように


リラックスしていた。





ただ一つふと思った。


この助手席にいつもは奥さんが座っているのだと


考えた瞬間吐き気がした。




でもわたしは日に日に図太くなっていた。


最終的にはわたしがこの人の妻になる。


こんな気持ちになったことも


いつかは笑い話にしてみせる。


随分強くなったもんだ。


というか開き直っていたのかもしれない。




観光地をまわり


2人でのんびり散歩して


終始私たちは笑っていた。



本気の笑顔だ。





旅館についてチェックイン。


きっと受付の人も私たちを夫婦か普通の恋人と思って疑わなかっただろう。


そのくらい私たちは自然な気持ちですごしていたんだ。





1日が終わり夜がふけ


朝が来てあっという間に帰る時間。


2人で過ごす事がこんなにも幸せなんだ。


そう実感した。


実感してしまった。


もう戻れない。


その頃のわたしは、もはや前しか見ていなかった。





そんなわたしのココロを打ち砕くでき事。





帰りの車中も2人ははしゃいだ。


2人でいると何をしてでも楽しくて


途中で寄ったサービスエリアは遊園地かというくらいのワクワク。


彼もこの旅が楽しくてたまらない様子。


わたしも同じ気持ちだよ。





少しでも長く一緒にいたくて渋滞にでも巻き込まれたかった。


早いものでいよいよ自宅近くまで戻ってきてしまった。


そして彼が呟いた。











「ああ、現実に戻っちゃうな」










わたしは思ったんだ。





わたしにとってコレは現実だよ。





あなたにとってわたしとの時間は非現実だったんだね。








わたしは一気に気持ちが引き離された気分になり

気づかれないようにサッと涙を拭いた。





そう


どんなに旅が楽しくとも


既婚男性にとって


それはそれ


これはこれ。




なんだ。