古き友よ。
払暁、君の旅立ちを知らせるベルが鳴った。
長い苦しみからようやく抜け出し、新しい世界へ、君は旅立って行った。
何もできなかった私は、ここで君の旅立ちを見送ることにする。
私は心から、君への尊敬と敬服と感謝と言葉を送る。
私の倍もあった体重も、最後は私の半分もなくなっていた。
あの豊だった髪も、すべて失っていった。
もうずいぶん前に、人の手を借りなければ動くこともできなくなっていた。
それで君は、何時も明日のことを語っていた。
希望とは何か、生きるとは何かを、周りの人に示しながら耐えていた。
土曜に私に吐露した言葉を除けば、弱音とは無縁の人だった。
5年も頑張った君には、静かに眠る権利がある。
私はその言葉を、私の心の奥深くへ留めておこうと思う。
君の遺志どおり、君の愛する人たちへも、その言葉は明かさずにおこう。
古き友よ。君の最後の姿は見ないでおこう。
古いアルバムの片隅にある、学生時代の君の姿を覚えておこう。
私は、君が長い旅に出たと思うことにする。
きっと君に、また会えると信じている。
私は、ここで君の旅立ちを、そっと見送らせてもらうことにする。
また会える時を楽しみにしながら。
古き友よ。お互いに、「さようなら」という言葉は嫌いだな。
最後に君に挨拶をしよう。
「では、またな。」
私は、ここで君の旅立ちを見送らせてもらうことにする。